Sep 11, 2024
50年後も聴き続けたい美しい旋律 #08「traveling」
50年後も聴き続けたい美しい旋律
今回は、J-POP史に輝く名曲であり、ポップスの金字塔とも言える宇多田ヒカルさんの「traveling」をご紹介します。
Prologue -日本の音楽界に突如現れた才能-
「ミレニアム (千年紀) 」という言葉が日本中を騒がせていた1999年。
突如として、一人の女性ミュージシャンが日本の音楽界を席巻します。
彼女の名前は、宇多田ヒカル。(正式なデビュー日:1998年12月9日)
日本にR&B (リズム・アンド・ブルース) を浸透させた張本人であり、
数多くのアーティストに多大な影響を与えた、20世紀最後の超新星!
作詞・作曲はもちろん、アレンジまでこなすそのスペシャルな才能に、
日本中のリスナーが夢中になり、一つの時代の流れを構築し始めます。
当時の宇多田さんの才能の凄さを示す、有名なエピソードがあります。
それは、1990年代に音楽界を席巻した小室哲哉さんが放ったこの言葉。
「(宇多田) ヒカルちゃんが僕を終わらせた」
小室さんは、宇多田さんの「Automatic (デビュー曲) 」を聴いたとき、
今までに無い (難しい) グルーヴ感に圧倒され、衝撃を受けたそうです。
他を圧倒するクリエーションで、驚きと感動を生み出した一つの奇跡。
(日本の音楽界にとって)
「宇多田ヒカル」という才能は、財産と言っても過言ではありません。
Chapter:1 -時代を感じさせない驚異のアレンジセンス-
「宇多田ヒカルの代表曲と言えば、どの楽曲か?」
宇多田さん以外のアーティストであれば、
あまり迷わないであろうベタな質問でさえ、当たり前のように熟考してしまう。
宇多田作品は、(デビュー当時から) CMやドラマなどのタイアップが多いので、
ヒット曲(及び有名曲)の数が非常に多く、一つに絞るのが容易ではありません。
デビューからコンスタントにヒットを連発する宇多田作品の一番の魅力は何か?
それはやはり、「宇多田ヒカル」という個性を立たせながらも、
どの時代にもフィットする音楽性を確立したアレンジセンスの素晴らしさです。
音楽業界にも、ファッション業界でいうトレンドのようなものが存在しますが、
これまでの宇多田作品からその匂いを感じたことは、ただの一度もありません。
もちろん、楽曲自体から時代を感じることは決して悪いことではありませんが、
時代感を意識しすぎると、一過性のものになってしまう危険性を孕んできます。
宇多田作品を通して思うこと。
それは、「アレンジ」の良し悪しが、楽曲にとってどれほど大事かということ。
本ジャーナルをきっかけにして、アレンジの重要性が伝われば嬉しく思います。
Chapter:2 -ポップソングの一つの完成形-
宇多田作品の中で、
個人的に大好きな (度肝を抜かれた) 楽曲が2つあります。
一つは、和と洋のテイストが美しくマリアージュする「DISTANCE」。
そして、残りの一つが、今回ご紹介させていただく「traveling」です。
2ndアルバムのタイトルにもなっている「DISTANCE」は、
ベスト盤には収録されておらず、どちらかと言えばコアな作品の部類に入ります。
ですが、宇多田作品の魅力 (強み) でもある、
和 (邦楽) と洋 (洋楽) のバランスがこれ以上ない形でミックスしている名曲です。
そして、「traveling」。
こちらも、和と洋のバランスが秀逸な作品ですが、
「DISTANCE」には無い疾走感と、アレンジバランスが他の作品よりも秀逸です。
- イントロ -
電子音のアルペジオ (分散和音:和音を一音ずつ鳴らす奏法) で始まるイントロ。
本楽曲を初めて聴いたとき、ここで使用されている音色に違和感を覚えました。
日本の「琴」を思わせる (またはそれに近い) 音色なので、
「どうしてなのかな?」と思いましたが、サビ直前の歌詞を見て納得しました。
(一番・二番を通じて)
サビ直前の歌詞には、平家物語から引用したと思われる言葉が用いられており、
歌詞全体を見渡してみても、使用している英語は「traveling」の一つのみです。
おそらく、歌詞と同様に、サウンドにも和のテイストを感じさせたかったので、
イントロ (最初) に日本を思わせる「琴」の音色を入れたのではないでしょうか?
しかも、ただ単に本物の琴の音色を使用するのではなく、楽曲との調和を考え、
電子音で鳴らしてくるところに宇多田さんの音楽的センスが凝縮されています。
先ほど、宇多田作品の魅力として「和と洋のバランスの良さ」を挙げましたが、
本楽曲のイントロは、まさに和洋折衷な宇多田アレンジの象徴となっています。
- ヴァース (A~Bメロ) -
音が連続するイントロとはうって変わり、リズム主体で構成されるAメロ部分。
(イントロの途中から入れている流れ星のような)
シンセパッドよりも強めにシンセベースを配置してリズムを強調させています。
この手の手法。つまりは、音数を極力抑えながらリズムを強調するヴァースは、
洋楽の世界では最もポピュラーな構成であり、特に珍しいものではありません。
ですが、そこは宇多田作品。リズムを強調する方法が、とてもシャレています。
というのも、Bメロの主旋律 (譜割り) が、Aメロのように不規則なものではなく、
3音ずつで構成された規則性のある旋律なので、リズムのような印象を受けます。
要するに、A・Bメロでリズムを強調する方法を意図的に変化させているのです。
Aメロでは、リズム隊を強調させて、リズムそのものを意識させているのに対し、
Bメロでは、主旋律そのものに規則性を与えることで、リズムを意識させている。
音楽にとって最も重要な「リズム」の意識付けを異なる手法で遂行した本楽曲。
しかも、それを日本語でやってしまうところが、本当に憎たらしいですね (笑)!
加えて、Bメロ部分から加わるバックコーラス (Ah~Ah~Ah~の部分) の定位を、
一番と二番で左右逆に配置するなど、リスナーを楽しませる要素も忍ばせている。
(楽曲の主役でもある) サビ前の段階からこのような遊びを入れてくる本楽曲は、
聴いていて本当に楽しいですし、宇多田さんの引き出しの多さに驚かされます。
- サビ -
規則性を持たせたBメロの主旋律。実はサビ全体にも大きな影響を与えており、
その答えを導くカギが、サビ頭を飾る「traveling」の譜割りに隠されています。
「traveling」の譜割りは、「トラベリング」ではなく「トラーーベリング」。
(3音ずつの緻密に計算された)
Bメロの譜割りを数小節聴かせた直後に、颯爽と現れる「traveling」の譜割りは、
Bメロとの違いを示すだけでなく、サビ頭としてこれ以上ない効果を発揮します。
加えて、「traveling」後の主旋律の譜割りをBメロと同様に3音ずつで区切ることで、
より一層「traveling」の部分を強調させながら、自然にサビの存在感を高めている。
たった一つの違和感を効果的に配置して相乗効果を狙っているこの天才的な譜割り。
(楽曲全体を通して)
洗練された主旋律。隙のないサウンドアレンジ。そして、ボーカルパフォーマンス。
本楽曲はあらゆる面で完成度が高く、まさにJ-POP史に輝く名曲と言えるでしょう!
Chapter:3 -楽曲の完成度を高めた詞の世界観-
末来を感じさせる洋楽風のサウンドに、
独特の違和感を与えている「traveling」の歌詞。
Chapter:2 でも触れましたが、まず注目してもらいたいのが、
全体の中で登場する英語が「traveling」の一つだけということ。
こうすることで、サビの「traveling」が必要以上に耳に残ります。
加えて、Aメロ~Bメロ部分の要所要所で心地よい韻を入れながら、
洋楽の雰囲気を取り入れるとともに、楽曲との調和を図っている。
宇多田さんは、楽曲制作を行うにあたり、
全て「曲先 (作詞より先に作曲を行う)」の手法を採用しています。
曲調から考えても、英語を多用した方が簡単(自然)でしょうし、
なによりも、本楽曲の世界観にピッタリの言語だと思うのです。
ですが、本楽曲では、歌詞の殆どを日本語のみで構成している。
自由に言葉選びが出来る環境にありながら、あえて制約を作り、
作品に最適な言葉を旋律から紡ぐという姿勢が実に素晴らしい。
リズムとサウンドを重視する洋楽と、言葉を大切にする邦楽の、
良い部分を掛け合わせた宇多田作品の中でも本楽曲は格別です。
Last Chapter -Re-Recording Ver.との違いを考察-
歌手デビュー25周年を記念して、2024年4月10日に発売された、
キャリア初のオールタイムベストアルバム「SCIENCE FICTION」。
(一般的に) この手のベストアルバムは、デビューからの代表曲を精査して、
リマスタリング (最新技術で高音質化) のみを施すパターンが多いのですが、
本作は再レコーディングや新しいミックスを施した楽曲が数多く存在します。
もちろん、今回ご紹介した「traveling」もDisc-2の一曲目に収録されており、
「traveling (Re-Recording)」としてサウンドアレンジにも変化がありました。
「オリジナルとの違いはどこにあるのか !?」
私なりの考察とシンプルな意見を交えながら、魅力をお伝えしていきましょう!
総合的なアレンジとしては、オリジナルバージョンに忠実な印象を受けました。
やはり、元々のアレンジに親しみがあるファンも多いので、この辺は流石です。
m-floの☆Taku Takahashiさんがサウンドプロデュースしていることもあって、
全体的にクラブ・サウンド特有のポップな世界観と、爽快感を纏わせています。
BPM (テンポ) が若干早くなっていますが、リズムのメリハリが素晴らしいので、
BPMの違いをそこまで感じません。(特に2番のBメロとラスサビ前が最高です!)
(年齢を重ねた現在の) 低音域の魅力が増した宇多田さんの歌声との相性も良く、
オリジナルバージョンでも魅力的だったダークな部分も感じることができます。
個人的な感想としては、いち楽曲として向き合うのならばオリジナルバージョン。
BGM感覚で聴くのであればRe-Recording Ver.という風になるのかなと思いました。
これは、今回の「traveling (Re-Recording)」に限ったことではありませんが、
宇多田さんは、今の自分を見極める力と、それに適応する能力が並外れています。
その時に出せる最高のパフォーマンスを常にリスナーに届けることができる才能。
このアルバムを通して、アーティスト「宇多田ヒカル」の凄さを再認識しました。
デビュー25周年に相応しい、最高のベストアルバムに仕上がっていると思います。
宇多田さんの「今」が詰まった「SCIENCE FICTION」。
気になった方は、ぜひ聴いてみてはいかがでしょうか !?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
traveling - 宇多田ヒカル (2001)
Lyrics:宇多田ヒカル / Music:宇多田ヒカル
今回は、J-POP史に輝く名曲であり、ポップスの金字塔とも言える宇多田ヒカルさんの「traveling」をご紹介します。
Prologue -日本の音楽界に突如現れた才能-
「ミレニアム (千年紀) 」という言葉が日本中を騒がせていた1999年。
突如として、一人の女性ミュージシャンが日本の音楽界を席巻します。
彼女の名前は、宇多田ヒカル。(正式なデビュー日:1998年12月9日)
日本にR&B (リズム・アンド・ブルース) を浸透させた張本人であり、
数多くのアーティストに多大な影響を与えた、20世紀最後の超新星!
作詞・作曲はもちろん、アレンジまでこなすそのスペシャルな才能に、
日本中のリスナーが夢中になり、一つの時代の流れを構築し始めます。
当時の宇多田さんの才能の凄さを示す、有名なエピソードがあります。
それは、1990年代に音楽界を席巻した小室哲哉さんが放ったこの言葉。
「(宇多田) ヒカルちゃんが僕を終わらせた」
小室さんは、宇多田さんの「Automatic (デビュー曲) 」を聴いたとき、
今までに無い (難しい) グルーヴ感に圧倒され、衝撃を受けたそうです。
他を圧倒するクリエーションで、驚きと感動を生み出した一つの奇跡。
(日本の音楽界にとって)
「宇多田ヒカル」という才能は、財産と言っても過言ではありません。
Chapter:1 -時代を感じさせない驚異のアレンジセンス-
「宇多田ヒカルの代表曲と言えば、どの楽曲か?」
宇多田さん以外のアーティストであれば、
あまり迷わないであろうベタな質問でさえ、当たり前のように熟考してしまう。
宇多田作品は、(デビュー当時から) CMやドラマなどのタイアップが多いので、
ヒット曲(及び有名曲)の数が非常に多く、一つに絞るのが容易ではありません。
デビューからコンスタントにヒットを連発する宇多田作品の一番の魅力は何か?
それはやはり、「宇多田ヒカル」という個性を立たせながらも、
どの時代にもフィットする音楽性を確立したアレンジセンスの素晴らしさです。
音楽業界にも、ファッション業界でいうトレンドのようなものが存在しますが、
これまでの宇多田作品からその匂いを感じたことは、ただの一度もありません。
もちろん、楽曲自体から時代を感じることは決して悪いことではありませんが、
時代感を意識しすぎると、一過性のものになってしまう危険性を孕んできます。
宇多田作品を通して思うこと。
それは、「アレンジ」の良し悪しが、楽曲にとってどれほど大事かということ。
本ジャーナルをきっかけにして、アレンジの重要性が伝われば嬉しく思います。
Chapter:2 -ポップソングの一つの完成形-
宇多田作品の中で、
個人的に大好きな (度肝を抜かれた) 楽曲が2つあります。
一つは、和と洋のテイストが美しくマリアージュする「DISTANCE」。
そして、残りの一つが、今回ご紹介させていただく「traveling」です。
2ndアルバムのタイトルにもなっている「DISTANCE」は、
ベスト盤には収録されておらず、どちらかと言えばコアな作品の部類に入ります。
ですが、宇多田作品の魅力 (強み) でもある、
和 (邦楽) と洋 (洋楽) のバランスがこれ以上ない形でミックスしている名曲です。
そして、「traveling」。
こちらも、和と洋のバランスが秀逸な作品ですが、
「DISTANCE」には無い疾走感と、アレンジバランスが他の作品よりも秀逸です。
- イントロ -
電子音のアルペジオ (分散和音:和音を一音ずつ鳴らす奏法) で始まるイントロ。
本楽曲を初めて聴いたとき、ここで使用されている音色に違和感を覚えました。
日本の「琴」を思わせる (またはそれに近い) 音色なので、
「どうしてなのかな?」と思いましたが、サビ直前の歌詞を見て納得しました。
(一番・二番を通じて)
サビ直前の歌詞には、平家物語から引用したと思われる言葉が用いられており、
歌詞全体を見渡してみても、使用している英語は「traveling」の一つのみです。
おそらく、歌詞と同様に、サウンドにも和のテイストを感じさせたかったので、
イントロ (最初) に日本を思わせる「琴」の音色を入れたのではないでしょうか?
しかも、ただ単に本物の琴の音色を使用するのではなく、楽曲との調和を考え、
電子音で鳴らしてくるところに宇多田さんの音楽的センスが凝縮されています。
先ほど、宇多田作品の魅力として「和と洋のバランスの良さ」を挙げましたが、
本楽曲のイントロは、まさに和洋折衷な宇多田アレンジの象徴となっています。
- ヴァース (A~Bメロ) -
音が連続するイントロとはうって変わり、リズム主体で構成されるAメロ部分。
(イントロの途中から入れている流れ星のような)
シンセパッドよりも強めにシンセベースを配置してリズムを強調させています。
この手の手法。つまりは、音数を極力抑えながらリズムを強調するヴァースは、
洋楽の世界では最もポピュラーな構成であり、特に珍しいものではありません。
ですが、そこは宇多田作品。リズムを強調する方法が、とてもシャレています。
というのも、Bメロの主旋律 (譜割り) が、Aメロのように不規則なものではなく、
3音ずつで構成された規則性のある旋律なので、リズムのような印象を受けます。
要するに、A・Bメロでリズムを強調する方法を意図的に変化させているのです。
Aメロでは、リズム隊を強調させて、リズムそのものを意識させているのに対し、
Bメロでは、主旋律そのものに規則性を与えることで、リズムを意識させている。
音楽にとって最も重要な「リズム」の意識付けを異なる手法で遂行した本楽曲。
しかも、それを日本語でやってしまうところが、本当に憎たらしいですね (笑)!
加えて、Bメロ部分から加わるバックコーラス (Ah~Ah~Ah~の部分) の定位を、
一番と二番で左右逆に配置するなど、リスナーを楽しませる要素も忍ばせている。
(楽曲の主役でもある) サビ前の段階からこのような遊びを入れてくる本楽曲は、
聴いていて本当に楽しいですし、宇多田さんの引き出しの多さに驚かされます。
- サビ -
規則性を持たせたBメロの主旋律。実はサビ全体にも大きな影響を与えており、
その答えを導くカギが、サビ頭を飾る「traveling」の譜割りに隠されています。
「traveling」の譜割りは、「トラベリング」ではなく「トラーーベリング」。
(3音ずつの緻密に計算された)
Bメロの譜割りを数小節聴かせた直後に、颯爽と現れる「traveling」の譜割りは、
Bメロとの違いを示すだけでなく、サビ頭としてこれ以上ない効果を発揮します。
加えて、「traveling」後の主旋律の譜割りをBメロと同様に3音ずつで区切ることで、
より一層「traveling」の部分を強調させながら、自然にサビの存在感を高めている。
たった一つの違和感を効果的に配置して相乗効果を狙っているこの天才的な譜割り。
(楽曲全体を通して)
洗練された主旋律。隙のないサウンドアレンジ。そして、ボーカルパフォーマンス。
本楽曲はあらゆる面で完成度が高く、まさにJ-POP史に輝く名曲と言えるでしょう!
Chapter:3 -楽曲の完成度を高めた詞の世界観-
末来を感じさせる洋楽風のサウンドに、
独特の違和感を与えている「traveling」の歌詞。
Chapter:2 でも触れましたが、まず注目してもらいたいのが、
全体の中で登場する英語が「traveling」の一つだけということ。
こうすることで、サビの「traveling」が必要以上に耳に残ります。
加えて、Aメロ~Bメロ部分の要所要所で心地よい韻を入れながら、
洋楽の雰囲気を取り入れるとともに、楽曲との調和を図っている。
宇多田さんは、楽曲制作を行うにあたり、
全て「曲先 (作詞より先に作曲を行う)」の手法を採用しています。
曲調から考えても、英語を多用した方が簡単(自然)でしょうし、
なによりも、本楽曲の世界観にピッタリの言語だと思うのです。
ですが、本楽曲では、歌詞の殆どを日本語のみで構成している。
自由に言葉選びが出来る環境にありながら、あえて制約を作り、
作品に最適な言葉を旋律から紡ぐという姿勢が実に素晴らしい。
リズムとサウンドを重視する洋楽と、言葉を大切にする邦楽の、
良い部分を掛け合わせた宇多田作品の中でも本楽曲は格別です。
Last Chapter -Re-Recording Ver.との違いを考察-
歌手デビュー25周年を記念して、2024年4月10日に発売された、
キャリア初のオールタイムベストアルバム「SCIENCE FICTION」。
(一般的に) この手のベストアルバムは、デビューからの代表曲を精査して、
リマスタリング (最新技術で高音質化) のみを施すパターンが多いのですが、
本作は再レコーディングや新しいミックスを施した楽曲が数多く存在します。
もちろん、今回ご紹介した「traveling」もDisc-2の一曲目に収録されており、
「traveling (Re-Recording)」としてサウンドアレンジにも変化がありました。
「オリジナルとの違いはどこにあるのか !?」
私なりの考察とシンプルな意見を交えながら、魅力をお伝えしていきましょう!
総合的なアレンジとしては、オリジナルバージョンに忠実な印象を受けました。
やはり、元々のアレンジに親しみがあるファンも多いので、この辺は流石です。
m-floの☆Taku Takahashiさんがサウンドプロデュースしていることもあって、
全体的にクラブ・サウンド特有のポップな世界観と、爽快感を纏わせています。
BPM (テンポ) が若干早くなっていますが、リズムのメリハリが素晴らしいので、
BPMの違いをそこまで感じません。(特に2番のBメロとラスサビ前が最高です!)
(年齢を重ねた現在の) 低音域の魅力が増した宇多田さんの歌声との相性も良く、
オリジナルバージョンでも魅力的だったダークな部分も感じることができます。
個人的な感想としては、いち楽曲として向き合うのならばオリジナルバージョン。
BGM感覚で聴くのであればRe-Recording Ver.という風になるのかなと思いました。
これは、今回の「traveling (Re-Recording)」に限ったことではありませんが、
宇多田さんは、今の自分を見極める力と、それに適応する能力が並外れています。
その時に出せる最高のパフォーマンスを常にリスナーに届けることができる才能。
このアルバムを通して、アーティスト「宇多田ヒカル」の凄さを再認識しました。
デビュー25周年に相応しい、最高のベストアルバムに仕上がっていると思います。
宇多田さんの「今」が詰まった「SCIENCE FICTION」。
気になった方は、ぜひ聴いてみてはいかがでしょうか !?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
traveling - 宇多田ヒカル (2001)
Lyrics:宇多田ヒカル / Music:宇多田ヒカル