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天才小室哲哉が彩りを与えた名曲30選

「 173 」

この数字は、(日本の音楽界が最も潤っていたであろう)1990年代における
シングルCDのミリオンセールス(売上100万枚以上)の数を示したものです。

1990年代と言えば、インターネットもまだまだ普及しておらず、
音楽CDはもちろん、服も直接お店で買うことが当たり前の時代。

ミリオンヒットの相対価値が (サブスクがある) 現在と同等ではないにせよ、この数字はまさに異例中の異例です。

メディアの中心には常にミュージシャンの存在があり、
90年代における音楽界の影響力は、本当に凄まじいものがありました。

また、90年代に入ると、表舞台に立つアーティストはもちろん、
裏舞台を支える人たちにもスポットライトが当てられるようになります。

その中でも、、、

特に注目された肩書と言えば、
音楽プロデューサーではないでしょうか!?

数々の名プロデューサーを輩出した90年代において、
ひと際存在感を示したプロデューサーが二人います。

しかも、二人のイニシャルは、偶然にも同じ「TK」。

一人目は、Mr.Childrenや (自身もメンバーとして加わった) My Little Loverなどのプロデュースを担当した、小林武史 (Takeshi Kobayashi) さん。

小林さんの音楽性を一言で表すならば、
まさに「ノスタルジー」という言葉が、ピッタリだと思います。

オルガン等を用いたレトロな音色など、
時代を感じさせない普遍的な名曲群は、今も沢山のリスナーに愛されています。

そして、二人目のTK。

この人こそ、90年代、
いや日本の音楽史に名を残す天才音楽家!

今回の主役でもある、
小室哲哉 (Tetsuya Komuro) さんです。

「音楽プロデューサー」という言葉を日本に広めた張本人であり、
数々の名曲を世に送り出した日本の音楽界における真のカリスマ。

ブランドロゴのように輝く「Produced by Tetsuya Komuro」の影響力は凄まじく、
90年代の日本の音楽界全体をプロデュースしていたと言っても過言ではありません。

今にして思えば、
小室哲哉というペンネームで音楽の神様が楽曲制作をしていたのかもしれませんね 笑

前置きが長くなりましたが、、、

今回のジャーナルは、
日本の音楽史に残る天才音楽家・小室哲哉さんの音楽にスポットライトを当てます。

当時を知るリスナーの方はもちろん、
令和世代のリスナーの方にも楽しんでいただけるよう構成を考え、
今回は楽曲紹介をメインにジャーナルを構成することにしました。

なぜならば、、、

このジャーナルの一番の趣旨は、
知識をひけらかすことではなく、小室作品の魅力をより多くの人 (特に小室さんを知らない世代) に伝えることだからです。

楽曲を通して、小室さんの音楽。
さらに言えば、90年代の音楽にも興味を抱いていただければ幸いです。

それでは、
自称小室哲哉フリーク (ほぼ全ての作品を所有しております) が選んだ、
「天才小室哲哉が彩りを与えた名曲30選」をどうぞお楽しみください!


注:今回の名曲30選を選ぶにあたり、以下のような基準を設けました。

・小室哲哉作品の特徴 (音楽性) が分かり易く反映されている楽曲であること
・現在でも比較的手に入りやすい音源 (マニアックすぎない楽曲) であること

ご紹介する楽曲の順番は、発売年 (年が同じ場合は月) の古い順とする。


Song Selection 1 : 全ての始まりはここから -TM NETWORK-


小室さんを語る上で、
絶対に外すことのできない楽器。それが、シンセサイザー。

(楽器の中では珍しく)20世紀に作られたシンセサイザーは、
時代とともに進化し続ける、まさに永遠に完成しない楽器。

そんなシンセサイザーを武器に、
新しいポップスの形を具現化したグループがTM NETWORKです。

もしも、このジャーナルをきっかけにして、
「小室さんの音楽をもっと知りたい!」と思われた方には、TM NETWORKの楽曲から聴き始めることを強くオススメします。

なぜならば、
小室さんを語る上で絶対に外すことのできない存在であり、小室サウンドのベースでもあるからです。

それでは、
厳選した (名曲揃いなので一番迷いました) 3曲をご紹介します。


1/30選 : Self Control (方舟に曳かれて) - TM NETWORK <1987>
初期の頃の楽曲ですが、現在でもライブで演奏されることが多いTM NETWORKを代表する極上ポップチューン。未来を感じさせるアレンジが本当に心地よく、令和の時代に聴いてもまったく古さを感じません。現在ではなく、常に未来を見据えて楽曲制作に挑むシャープな姿勢がこのような名曲を生み出すのでしょう。個人的には、疾走感をより感じることができるライブ音源 (特にオリジナル音源に忠実な「TMN final live LAST GROOVE」) バージョンが大好きです。

2/30選 : Human System - TM NETWORK <1987>
聴き馴染みのあるモーツァルトのトルコ行進曲のメロディーをイントロやアウトロなどに使用し、叙情的な旋律と優しい音色でファンからの人気も高い本楽曲。クラシックの名曲に違和感なく溶け込む美しい主旋律と繊細な世界観を表現したアレンジが最高!小室さんの非凡な音楽センスが感じられる名曲だと思います。TM NETWORKのイメージとして、明るいアップテンポな楽曲をイメージする方も多いと思いますが、スローテンポな楽曲も以外に多く、総じて名曲揃いです。

3/30選 : I am - TM NETWORK <2012>
(1994年に活動を一旦終了) TM NETWORK再始動後の楽曲の中でも特に印象的なのがこの楽曲。ライブでも名曲「Get Wild」と同様、よく演奏されています。キーが激しく切り替わるボーカル泣かせの難曲を、さらりと歌いこなす宇都宮隆さんのプロフェッショナルなボーカルは流石の一言。自然と高揚感が溢れます。何かに疲れ果て、自分自身を見つめ直したいときにぜひ聴いてみてください!「I am」と名付けられたタイムマシーンが貴方の原点へと導いてくれるでしょう!


Song Selection 2 : 小室プロデュースのプロローグ -TRF-


TM NETWORKのメンバーとして活動しながら、
作曲家としても活躍していた1991~1992年頃。

当時流行していたダンスミュージックに目をつけた小室さんは、
ボーカルを入れたダンスユニットをエイベックスとともに構想。

その後、エイベックス第一号の邦楽グループとして誕生したダンスユニットが、
日本のリスナーにダンスミュージックを浸透させたTRF (初期の表記はtrf) です。

TRFのブレイクと同時に小室さんの名前も知られるようになり、
音楽プロデューサーとしての認知度も急速に広まっていきます。

小室作品 (小室さんの音楽性) を語る上で絶対に外すことのできないTRFの楽曲。

今回、アーティスト単位では一番多い、計6曲を真剣に選ばせていただきました。

気に入っていただければ、嬉しいです。(残りの3曲は別のSong Selectionで記載)


4/30選 : EZ DO DANCE - TRF <1993>
TRFを代表する曲であり、ダンスボーカル物の最高峰として知られる「EZ DO DANCE」。本楽曲を語る上で欠かせない重要なワード、それは「リズム」です!トラック数 (曲中で使用する楽器パートの数) やコード進行の種類も極端に少なく、ここまで徹底してリズム主導で構成されたボーカル楽曲は他に類を見ません。個人的には、ベースに意識を向けながら聴くことをオススメします。数ある小室作品の中でも、トップクラスと言っていいほどのベースの譜割りは必見です!

5/30選 : survival dAnce ~no no cry more~ - TRF <1994>
(TRFにとって)初めてのオリコンシングルチャート1位とミリオンセールスを達成した記念すべき楽曲であり、J-POPの歴史に燦然と輝くダンスポップチューン!洗練されたメロディーと(リズム隊を含めた)音色の選び方が素晴らしく、30年前の楽曲でありながら、現在のポップソングと比べても全く見劣りしていません。本楽曲の存在は、TKサウンドが一時代を築いた一過性のものではなく、どの時代に聴いても色褪せずに輝いていることを証明しているのではないでしょうか?

6/30選 : CRAZY GONNA CRAZY - TRF <1995>
小室サウンド100%の心が躍るイントロが印象的な本楽曲。(TRFの十八番でもある) リズムを意識させたダンスポップではない、純粋なTKポップを楽しめます!イントロの秒数が「45秒」とアップテンポの楽曲にしては少し長めの設定ですが、個人的には本編へのワクワク感を誘導する完璧なイントロだと思っています。(長いイントロが懸念される) サブスク時代の今だからこそ、イントロの存在する意味と作品における重要性を、本楽曲を聴きながら再確認してみてください。


Song Selection 3 : 小室プロデュースの真骨頂 -女性ボーカルセレクション-


「小室プロデュース」と聞いて、一番に思い浮かべるもの。
それは、やはり女性ボーカルの楽曲群ではないでしょうか?

もちろん、キーが高いことでも知られる小室作品において、
女性ボーカルの存在が不可欠なのは言うまでもありません。

ですが、それ以上に、女性という存在がキーとなる未来を、いち早く見抜いていたのではないでしょうか?

小室さんがプロデュースした女性ボーカルを調べてみると、歌手を本業としていない人も少なくありません。
今にして思えば、常にその先の未来を見据えた戦略こそが、小室さんの一番の才能だったのかもしれません。

次にセレクトした6曲は、
小室プロデュースの真骨頂でもある、女性ボーカルの楽曲になります。

小室さんのメロディ (特に主旋律) を紐解いていくと、
音符の変動が少なく、ピアノで言えば片手で収まる範囲でメロディが構築されています。

これは、小室さんの手癖が影響しているのかもしれませんが、
結果的に覚えやすく、そして歌いやすいメロディになっているのです。

歌手を本業としていない人にも違和感なく溶け込む小室作品の秘密も、何となく分かるような気がします。


7/30選 : ドリーム ラッシュ - 宮沢りえ <1989>
アイドルと女優という、今で言うところの二刀流としてすでに地位を不動のものにしていた、宮沢りえさんの歌手デビュー作がこの「ドリーム ラッシュ」です。小室さんがトータルプロデュースを手掛けた最初の作品としても有名であり、ミキシング作業やビジュアルのチェックにも携わったという逸話が残っています。80年代の洋楽を思い起こさせる打ち込み系サウンドとピュアな歌声が絡み合う心地よいポップソング。小室プロデュースの原点とも言える貴重な作品です。

8/30選 : NO TITLIST - 宮沢りえ <1990>
イントロが流れた瞬間から、心が躍る神アレンジ!この世界観がまさに「This is 小室哲哉」あり、小室サウンドが好きな方にはドンピシャな作品だと思います。繰り返しのAメロから差し込んでくる代名詞の転調部分は、小室さんのセンスが凝縮された箇所であり、この楽曲のハイライトと言っても過言ではありません。名詞部分をあえて英語表記にした歌詞 (「ドリーム ラッシュ」でも採用) も素晴らしく、純粋な日本の楽曲でありながら、洋楽のような雰囲気を味わえます。

9/30選 : 愛撫 - 中森明菜 <1994>
もしも、「小室プロデュース作品の中で、他のアーティストにカバーして欲しくない楽曲は何か?」と問われたら、私は迷わずこの「愛撫」と答えるでしょう!なぜならば、TM NETWORK(男性ボーカル物)を彷彿させるこのサウンドアレンジを歌いこなせる女性ボーカルが、中森明菜さん以外に思いつかないからです。小室サウンドと完璧に調和する、中森明菜さんの妖艶なボーカルパフォーマンス。衝撃的なケミストリーがクセになる大人のポップソングをご堪能ください。

10/30選 : happy wake up ! - 観月ありさ <1994>
「happy wake up !」というタイトルをそのまま音で表現したような爽快感溢れる本楽曲は、90年代におけるTKポップスの王道的な作品に位置づけられます。間奏やアウトロにAメロやサビのフレーズを入れて主旋律のメロディーを印象付けるテクニックが素晴らしく、ポップスのお手本とも言える作品だと思います。(曲中でも効果的に使用している) 4連続のスネアドラム音で曲を締めくくるアレンジが最高!個人的には、このリズム隊で終わるオーラス部分が大好きです。

11/30選 : 恋しさと せつなさと 心強さと - 篠原涼子 with t.komuro <1994>
日本の女性ソロ歌手で初めてダブルミリオン (売上200万枚) を達成した本楽曲は、小室哲哉という名前を多くのリスナーに知らせるきっかけにもなりました。(最初のサビでも被せてあるので) ピアノの存在に意識が行きがちですが、個人的にはオブリガード的に入るギターの音がこの曲のアレンジの肝だと思っており、ギターを意識しながら聴くと、生ドラムとも相まってロックテイストな雰囲気を味わえます。小室さんの (楽曲に合った) アレンジ能力の高さを示す1曲です。

12/30選 : I'm proud - 華原朋美 <1996>
華原朋美さんの最大のヒット曲でもある本楽曲。小室さん自身もその手ごたえを感じており、後に「自分の中でも5本の指に入るほどの力作」と語っています。(リズム隊は打ち込みですが) オーケストレーション主体で構成されるオケがこの作品の優雅さを物語っており、華原さんの伸びやかな歌声を引き立てています。(プチ情報として) CDシングルに収録された「Radio Edit」よりも、アルバムに収録された「full version」の方がラスサビの盛り上がりをより堪能できますよ!


Song Selection 4 : オンリーワンな作品へと昇華させるTK PIANOの音色


小室プロデュースの全盛期において、
「何を聴いても同じに聴こえる!」という声がリスナーから発せられることも少なくありませんでした。

もちろん、同じ人間が制作するので、
ある程度の類似性は否定できません。

ですが、逆に言えば、
それほど小室プロデュース作品が多くのリスナーに浸透していたということになります。

小室さんの楽曲(特にアレンジ)を注意深く聴いていくと、ある2つの特徴に気がつきます。

それらはまるで、老舗飲食店の秘伝のタレのようなものであり、
私のようなコアなファンは、逆にそのアレンジを求めています。

一つ目は、一定のリズムに乗って和音 (コード) を重ねるピアノのリフ。

小室さんの代表曲(アップテンポの楽曲群)には必ずと言っていいほど採用されており、
小室プロデュース作品でしか聴くことのできない独特なグルーヴを生み出しています。

二つ目は、リスナーにTKピアノと呼ばれているピアノの音色。

Rolandの「JD-800」というシンセサイザーに搭載されたその音色は、
ピアノとエレクトリックピアノを組み合わせたような音色が特徴的で、多くの作品に採用されています。

「何の変哲もない少女が、メイクひとつで印象がガラリと変わる。」

TKピアノの存在は、
楽曲のポテンシャルを最大限に引き出す魔法の楽器に他なりません。

アップテンポの楽曲には品性を与え、
スローテンポの楽曲には優しさを与えるTKピアノ。小室サウンドには欠かせない楽器です。

そんなTKピアノの音色を堪能できる最高の4曲をご紹介しましょう!


13/30選 : 寒い夜だから・・・ - TRF <1993>
小室アレンジの特徴でもあるピアノのリフとTKピアノが色濃く反映されたアレンジになっており、アップテンポの楽曲の中でも特にTKピアノを堪能できます。(サビはもちろんのこと) 主旋律のメロディにもTKピアノを効果的に (他の楽曲よりも強めに) 被せており、歌詞に書かれた世界観と綺麗にシンクロしています。少し跳ね気味で強めのスネアドラムが地味に良い仕事をしており、TKピアノ特有のエッジを際立たせてながら、この楽曲の切なさをより上品に演出しています。

14/30選 : Only You - 内田有紀 <1995>
本楽曲の一番の聴きどころ。それは、アウトロ部分のTKピアノ劇場!大サビ部分を終えた後、それまでボーカルのバッキングとして機能していたTKピアノが、突如メインボーカルのようにその存在感をアピールし始めます。アウトロで主旋律をピアノ等の楽器で反復させる手法は小室作品において珍しくありませんが、本楽曲ほど長い (約1分半) アウトロは他にありません。小室作品の主旋律の美しさ (キャッチーさ) を存分に味わえる、最高のアウトロアレンジだと思います。

15/30選 : I BELIEVE - 華原朋美 <1995>
元々はglobe用の楽曲として制作されていた本楽曲。イントロ・間奏・アウトロなど、楽曲の雰囲気を印象付ける要所要所で効果的にTKピアノを使用しており、TKピアノの特性(音色の美しさ及び女性ボーカルとの相性)が生かされたアレンジになっています。時折入るベルの音といい、音選びに関しては本当に完璧です。globeの楽曲として発表していてもヒットしていたとは思いますが、このアレンジを聴いてしまうと、ボーカルはやはり華原朋美さん以外に考えられませんね。

16/30選 : DEPARTURES - globe <1996>
メディア出演を控えながらも、デビューから着実に知名度を上げてきた「globe」。その名を全国区に押し上げた最大のヒット曲がこの「DEPARTURES」です。ピアノを主体にしてオケを制作したこともあり、TKピアノの存在感が際立っています。ピアノオンリーの場合とバッキングで使用される場合との対比が面白く、TKピアノの表情の違いを一曲の中で楽しむことができます。個人的には、ピアノの伴奏から始まるアルバムヴァージョンの方が雰囲気があって好きです。


Song Selection 5 : 時代を席巻したディーバとの出会い -安室奈美恵-


日本の音楽界の歴史を紐解いていくと、
70年代には山口百恵さん。80年代には松田聖子さんというように、
各年代ごとに時代を象徴する女性アーティストが生まれています。

彼女たちの存在は、音楽界のみならず、
さまざまな場所で影響を及ぼしますが、90年代における安室奈美恵さんの活躍はまさに別格でした。

表舞台で活躍する安室さんと、裏方で活躍する小室さん。

女性アーティストを沢山手掛けてきた小室さんにとって、
安室さんとの出会いは、ある意味必然と言えるかもしれませんが、今思えばそうなる運命だったのでしょう。

それでは、同じ時代を生きた2人のカリスマが交差して生まれた名曲の中から、厳選した4曲をご紹介します。


17/30選 : Don't wanna cry - 安室奈美恵 <1996>
それまでの「安室奈美恵=ダンスミュージック」というイメージをくつがえし、ブラックミュージック風に仕上げられた安室さんのミディアムテンポの代表曲。サウンド的には小室さんらしさ全開ですが、本場仕込みのコーラスワークやベースの音色 (アルバムでは生音に差し替え) など、新しい世界観を堪能できます。(小室プロデュースを離れた後の作品を見ても) この楽曲が安室さんに与えた影響は大きいのではないでしょうか!? まさに、運命を変えた1曲だと思います。

18/30選 : SWEET 19 BLUES - 安室奈美恵 <1996>
安室さんの好きな、ジャネット・ジャクソン (マイケル・ジャクソンの実妹でブラックミュージック界の大スター) 風のテイストを盛り込んだ同名アルバムからのリカットシングルであり、小室プロデュース時代を代表するミディアムバラードです。楽器のリバーブ (音に空間的な深みを与えるエフェクター) を控えめにしてオケを際立たせながら、言葉(歌詞)への配慮もしっかり行き届いている。まさに、日本風R&Bのお手本のような作品と言えるのではないでしょうか?

19/30選 : CAN YOU CELEBRATE? - 安室奈美恵 <1997>
安室奈美恵という歌い手を語る上で、絶対に欠かすことのできない本楽曲。90年代を代表する名バラードは、小室さんにとっても最大のヒット曲となりました。リリース当初から、「CAN YOU CELEBRATE?」という英文法を疑問視する声がよく上がりますが、そこには音に気持ちよくハマるフレーズを最優先するという小室さんの明確な意図 (こだわり) があり、音楽家としてのプライドがつまっています。文法よりも音と言葉の調和を大事にするその姿勢、私は大好きです。

20/30選 : NEVER END - 安室奈美恵 <2000>
2000年に行われた九州・沖縄サミットのイメージソングとして制作された本楽曲。安室さんの出身地でもある沖縄の音楽 (琉球民謡) のメロディーを取り入れ、レコーディングにも沖縄出身のアーティストが参加しています。(個人的には)小室さんの楽曲はどちらかというと洋楽の匂いを感じることが多かったのですが、この「NEVER END」は純然たる日本の歌に他なりません。小室サウンドで奏でられる純度100%の日本歌謡。今回の30選の中でも、唯一無二の存在感です。


Song Selection 6 : 小室サウンドの集大成 -globe-


1995年。TM NETWORKでの音楽活動を終えて以降、
プロデュース業に専念していた小室さんが新しいユニットを組むことになります。

ユニット名は、英語で「地球」を意味する「globe」。

日本のみならず、世界展開も視野に入れた、
小室サウンドの集大成とも言うべきそのユニットは、日本の音楽史に残るグループへと成長します。

最大のヒット曲でもある「DEPARTURES」を含んだ1stアルバム「globe」は、
日本の音楽史上初の売り上げ400万枚以上のメガヒットとなり、日本記録を更新。

その後、B'zやGLAYが発表したベストアルバムに記録を更新されてしまいますが、
オリジナルアルバムでの400万枚以上は、globeと宇多田ヒカルさんだけの快挙です。

まさに、記録にも記憶にも残るスーパーユニット。それが、globeなのです。

globeの魅力は、
何と言ってもその表情豊かな音楽性にあります。

1stアルバムの「globe」までは、小室作品の王道でもあるダンスミュージックが中心でしたが、
2ndアルバムの「FACES PLACES」以降は、トランスやプログレなどの音楽も取り入れながら、常に新しい音楽の形を模索していました。

ダンスミュージックが全盛の時代にも関わらず、
意欲的に他のジャンルの音楽を取り入れながら、自身の可能性を追い求め続ける飽くなき探求心。

もしかすると、小室さんの中のglobeの存在は、
一つの実験工場的な意味合いもあったのかもしれません。

私自身も、
アルバム「FACES PLACES」以降の楽曲群が大好きなので、次にご紹介する3曲もあえてその中から選びました。(もちろん、クオリティも最高です!)

小室作品の音楽の幅を、
より感じていただけるのではないでしょうか?


21/30選 : FACES PLACES - globe <1997>
globeの中ではもちろん、小室作品において最もハイトーンを要する楽曲であり、ボーカリストKEIKOのポテンシャルをこれでもかと感じることができる作品。荒々しいギターの音を交えながら、徐々に加速していくサビへのプロローグ。6分半を超える楽曲でありながら、その長さを感じさせない楽曲運びが秀逸です。(プロの方でも) globeの楽曲はどれも歌いこなすのが困難ですが、この楽曲には、歌の上手さを超えた何か別のモノが宿っているような気がしてなりません。

22/30選 : Love again - globe <1998>
フェードインから始まり、お決まりのピアノリフが入るも、いつもとは様子 (音色) が違う。サビのバックを彩るシンセパッドの主張 (音量) も明らかに大きい。本楽曲を一言で表現すると、かなりエッジの効いた作品と言えます。それまでの特性を生かしつつも、新たな音楽性を模索するglobeの実験性が感じられます。「FACES PLACES」以降、KEIKOさんの個性 (エッジの効いたボーカル) を生かした作品が多くなりますが、その中でもトップクラスの出来だと思います。

23/30選 : Many Classic Moments - globe <2002>
トランス (ハウスから派生したダンスミュージックの一種) を主体としたアレンジが印象的な本楽曲。バッキングの音量もいつもより大きめに設定されています。個人的には、 (90年代とは違う) 現在の小室さんの音楽に繋がる (もっと言えば影響を与えた) 作品だと思っており、小室作品における分岐点の一つと言えます。この楽曲に関しては、ボーカルではなくバックの音に意識を向けてぜひ聴いて欲しいです。小室さんの音に対するこだわりが凝縮された最上級のアレンジです。


Song Selection 7 : 魅力的なコラボレーション


小室さんの音楽史を語るときに、
どうしても目立ってしまうもの。

それは、やはり豪華なミュージシャン (及び有名人) とのコラボレーションでしょう。

1991年に結成した伝説のユニット「V2」は、
TM NETWORKとX (後にX JAPANに改名) の中心メンバーでもある、小室さんとYOSHIKIさんによる夢のようなコラボレーション!

唯一のシングルタイトル曲「背徳の瞳 ~Eyes of Venus~」は、
YOSHIKIさんの世界観を尊重しながらも、要所要所で小室サウンドを織り交ぜた渾身の作品に仕上がっています。

そして、一般的にはあまり知られていませんが、
世界マーケットとのつながりも意外とあります。

「SPEED TK RE-MIX」は、世界的にヒットした映画「スピード」の続編のテーマ曲に採用され、
「TOGETHER NOW」は、世界一のスポーツイベントでもある、FIFAワールドカップ・フランス大会 (1998) のテーマ曲に採用されました。

その中でも、
私が特に好きだったのは「EUROGROOVE」プロジェクト。

(日本の文化を反映させた) ダンス・ミュージックを海外に発信するための本プロジェクトは、
セールス的に振るわず、僅か2年弱で終了していまいましたが、個人的には注目していました。

中でも、(一番のお気に入りでもある)「BOOGIE WOOGIE」という楽曲が素晴らしく、
日本語訳で小室ファミリーの誰かが歌い発売すれば、絶対に大ヒットしていたはずです。

(少々マニアックなので) 今回の30選には入れていませんが、
興味のある方は、ぜひ探してみてください。(驚きますよ!)

さて、次にご紹介する2曲は、
コラボレーションの中でも特に注目された新旧の名曲。

どちらも、コラボレーション相手の特性を生かした楽曲に仕上がっています。

24/30選 : WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~ - H Jungle with t <1995>
ユニット名にもなっている「ジャングル」は、ドラムのフレーズを早回しで再生するアンダーグラウンドな音楽。当時の日本では馴染みのないジャンルでした。レゲエ調から始まり、中盤 (転調) 以降にジャングルのリズムを組み合わせる手法は他に例がなく、小室さんのプロデュース力の凄さを感じる一曲だと思います。誰でも簡単に口ずさめるメロディーに (当時の) 流行りの音楽を組み合わせ、ユーモアをも兼ね備えた本楽曲。90年代を代表する最高の応援歌です!

25/30選 : Route 246 - 乃木坂46 <2020>
2018年1月に音楽活動からの引退を表明した小室さん。それから、2年3か月ぶりに楽曲提供した相手は、今や国民的アイドルグループへと成長した乃木坂46。メロディーラインは、90年代の「The 小室哲哉」を彷彿とさせるものになってますが、サウンド (アレンジ) 的には近年の小室さんに近いものとなっています。まさに、新旧の小室哲哉をフュージョンしてできた楽曲と言っても過言ではなく、復帰作においてこれ以上のものはなかったのではないでしょうか!?


Song Selection 8 : マイ ベスト セレクション


最後は「マイ ベスト セレクション (トップ5) 」

どの楽曲も一言では語りつくせないほど思い出があり、
イントロを聴くだけで当時にタイムスリップできます。

時代が移り変わっても色褪せることのないその存在感。

本当に、素晴らしい楽曲ばかりです。


26/30選 : My Revolution - 渡辺美里 <1986>
美しいイントロに心を奪われ、サビ前の転調で心を鷲掴みにされる見事なメロディーライン。小室作品という枠に収まらない、J-POPの歴史に残る大名曲です。小室さんが数少ない音楽の師と仰ぐ天才アレンジャー・大村雅朗氏(アレンジを担当)との奇跡のコラボレーションは、時代を超えて愛される楽曲となりました。(後に日本の音楽界を席巻することになる)作曲家小室哲哉としての原点でもあり、頂点と言っても過言ではありません。まさに、"My Revolution" な一曲です。

27/30選 : STILL LOVE HER (失われた風景) - TM NETWORK <1988>
多くのファンから大名盤と評される、アルバム「CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~」のラストを飾る名曲中の名曲。ロンドンでレコーディングされた上質なオケが切ない歌詞を包み込み、聴く人を遠い記憶の片隅へと誘ってくれます。「失恋」をテーマにした楽曲はこの世に溢れており、珍しくはありません。ですが、これほど上品で憂いを帯びた失恋ソングを私は知りません。この楽曲をきっかけに、作詞家としての小室さんにも注目していただけると嬉しいです。

28/30選 : WORLD GROOVE 3rd.chapter(main message) - TRF <1994>
もしも小室作品だけのベストアルバムを制作するならば、私は間違いなくこの楽曲を最後に指定すると思います。輪廻転生にも通じる壮大な愛のメッセージを、優雅な小室サウンドとともに堪能する至福の7分間。アルバムの曲とは思えない完成度です。様々な音楽ジャンルをミックスさせたようなサウンドアレンジは、まさに「WORLD GROOVE」というタイトルそのもの。言葉と音楽。この二つの要素が奇跡の配分で融合された、小室作品の隠れた名曲だと思います。

29/30選 : BOY MEETS GIRL - TRF <1994>
メロディーラインはもちろん、アレンジに関してもイントロからアウトロに至るまですべて完璧!音楽家小室哲哉の才能が凝縮された渾身の一曲だと思います。これは個人的な見解になりますが、Aメロ部分のメロディーラインに関しては小室作品だけではなく、J-POPの全ての楽曲の中でトップ3に入ると思っています。マイ ベスト セレクションの中でも「My Revolution」と「BOY MEETS GIRL」の2曲は別格であり、これらの楽曲に出会えた奇跡を私は誇りに思います。

30/30選 : Feel Like dance - globe <1995>
伝説のユニット「globe」のデビュー曲でもある本楽曲。聴きどころはイントロからアウトロに至るまでの全てであり、ある意味どこを切り取ってもサビです。その後の伝説の始まりを予感させる奇跡のイントロからTKピアノで締めくくる大人なアウトロまで一分の隙もなく、完璧なサウンドアレンジが施されています。名曲の宝庫と言われる (後のインタビューで自身の全盛期と語った) 1995年頃の小室作品の中でも、完成度がズバ抜けて高いピュアなポップソングです!


終わりに、、、


相当な音楽マニアであっても、
この世に存在する全ての楽曲に出会うことは、おそらく不可能でしょう。

人に命というものがある限り、
出会える楽曲にも限度というものがあります。

今回、本ジャーナルを通して、
初めて小室作品と接点を持った方もいると思います。

この奇跡のような出会いから生まれる未来の記憶が、
素晴らしいものであることを心より願っております。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


Song Credits

Lyrics
1・2 : 小室みつ子
3 ~ 6 , 10 ~ 24 , 27 ~ 30 : 小室哲哉 (17のみ前田たかひろと共作)
7・8・26 : 川村真澄
9 : 松本隆
25 : 秋元康

Music
All Music : 小室哲哉 (27のみ木根尚登と共作)

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