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David Fosterが奏でる珠玉の名曲30選

David Foster (デイヴィッド・フォスター)

彼は、私が最も敬愛するミュージシャンであり、
世界的にも超有名な音楽プロデューサーの巨匠。

その素晴らしい世界観を多くの人に伝えるべく、
前に一度ジャーナルを書いたことがありますが、多くの反響がありました。

そこで今回は、、、

David Fosterの音楽をさらにマニアックな視点で迫ってみようと一念発起。
音楽愛好家の方も満足できるような内容でDavid Fosterの魅力に迫ります!

注:2021年12月に発表した「David Fosterが奏でる優雅な魔法の音色
における説明文と一部記載が重なる箇所がありますがご了承くださいませ。


Prologue -David Fosterと魔法の音色-


David Foster (以下:フォスター) が手掛けたCDの総売上げ枚数は、全世界で5億枚以上。

加えて、グラミー賞 (世界で最も権威のある音楽賞) をこれまでに16回も獲得しています。

これらの数字は、彼が音楽史に名を残す偉大なミュージシャンであることの証明であり、
メディア等で「歴史上最も成功した音楽プロデューサー」と称される所以でもあります。

フォスターが手掛ける音楽は、とても優雅で美しく、そして何よりも洗練されています。

使っている楽器や機材は他と変わらないはずなのに、なぜこうも違う印象を受けるのか?

幼少期からクラシックピアノを学んでいたので、音楽理論に精通しているのは明白です。
しかしながら、フォスター作品の一番の魅力は、音楽理論以外の所に隠れているのです。


「フォスター作品の一番の魅力」


それは、他のミュージシャンでは決して聴くことのできない独特な「音色」にあります!

気品に満ちたその音色は、夢の世界にでも迷い込んだような独特なエフェクトが特徴的。
(特に、80年代中盤から90年代(フォスターの黄金期)にかけてリリースした作品に注目!)

普段聴き慣れているピアノやギターの音も、フォスター独自のフィルターを通した途端、
今までに聴いたことのないような幻想的でロマンティックな音色に変化してしまいます。

そしてもう一つ。フォスター作品を語る上で欠かせないリスニングポイントがあります。

それは、「この楽曲に最適なものは何か?」をとことん追求したサウンドアレンジです。

楽曲の世界観に映えるサウンド選びや、ボーカル(主旋律)に配慮した楽器の入れ方など、
フォスターの美学が細部にまで行き届いた唯一無二の音楽作品は、まさにアートの領域。

一つの楽曲に対して無限の可能性があるアレンジ作業は、常に何かの選択の連続であり、
楽曲制作においては、ある意味、作詞・作曲よりも困難な作業と言っても良いでしょう。

このような正解のない作業において、常に魅力的な答えを導くことができる音楽センス。
驚きと感動で満ち溢れているフォスター作品は、多くのリスナーを虜にしているのです。

前置きが長くなりましたが、、、

ここからは、自称フォスターフリークの私が厳選した珠玉の30作品を解説していきます。
一つ一つ丁寧に (所々マニアックに) ご紹介していきますので、お付き合いくださいませ。


注:今回の名曲30選を選ぶにあたり、以下のような基準を設けました。

・David Fosterの音楽性、及び世界観が分かり易く反映されている楽曲であること

ご紹介する楽曲の順番は、発売年 (年が同じ場合は月) の古い順とする。

All of the Songs : Produced By David Foster


Song Selection 1 : David Fosterの世界観を堪能する -至高のインストゥルメンタル作品集-


最初のセレクションは、
フォスターの世界観を存分に味わえるインストゥルメンタル作品です。

個人的には、今回の30選の中で最も聴いて欲しい5曲かもしれません。

どれも、彼の代名詞でもあるピアノを中心とした素晴らしい曲ばかり。
同じ楽器とは思えないほど、楽曲によってピアノの音色が変化します。

フォスター特有の魔法の音色を美しい旋律とともにお楽しみください。


1/30選 : Love Theme From St. Elmo's Fire - David Foster <1985>
1980年代を代表する青春群像映画「セント・エルモス・ファイアー」。同映画の「愛のテーマ」としても有名な本楽曲は、主題歌とともに大ヒットを記録した。フォスター作品特有のリバーブ (音に空間的な深みを与えるエフェクター) を施したロマンティックなピアノの音色が作品全体を包み込み、優雅な世界観を演出。2番の主旋律をサックスに変更するなど、リスナーを全く飽きさせない楽曲構成が本当に巧みであり、インストゥルメンタル作品としての完成度が素晴らしい。

2/30選 : Flight Of The Snowbirds - David Foster <1986>
まず何よりも素晴らしいのが、各楽器に施した音のバランス。それぞれの良さが最大限に発揮できるよう、音量とエフェクターがミリ単位で調整されています。美しい音で奏でられる本楽曲は、フォスターの真骨頂と言っても過言ではなく、ストーリー性を感じさせる楽曲構成も相まって、壮大な世界観を堪能できます。メロディーメイカーとしての才能が遺憾なく発揮された「Flight Of The Snowbirds」。ご試聴の際には、良質なイヤホンやヘッドホンをご用意くださいませ!

3/30選 : Gazebo - David Foster <1987>
マイケル・J・フォックス主演の映画「摩天楼はバラ色に」のワンシーンを彩る本楽曲。同映画のサウンドトラックを手掛けたフォスターらしさ満載の名曲です。エレクトリック・ピアノの雰囲気を兼ね備えたピアノの音色 (異なるピアノの音を重ねている?) が素晴らしく、作品全体に何とも言えない上品さを与えている。フォスター作品の中でもマニアックな部類に入るので、音源を手に入れることは正直難しいですが、個人的に思い入れのある作品なので30選の一つとしました。

4/30選 : Winter Games - David Foster <1988>
1988年に開催されたカルガリーオリンピックの公式テーマソングとして有名な本楽曲。日本のTV番組でも多用されていたので、ご存じの方も多いと思います。本楽曲が収録された「シンフォニー・セッションズ (フォスターの2ndソロアルバム)」は、フルオーケストラを交えたピアノ作品だけで構成された歴史的名盤。いつもとは一味違うクラシカルなフォスターを堪能できる素晴らしい一枚に仕上がっています。演奏家としても超一流なフォスターのピアノプレイは必見です!

5/30選 : I Will Be There With You - David Foster <2008>
日本航空 (JAL) の機内搭乗時に流れるBGMとして多くの人々を癒してきた本楽曲。フォスター自身が大空へ飛び立つ飛行機を思い描きながら作曲したそうです。美しいピアノと優雅なストリングスが織りなす奇跡のハーモニー。1・2番で主旋律を奏でる楽器を入れ替えながら、それぞれの良さを引き立たせている構成力。フォスターの音楽センスが凝縮された名曲です。2019年には、キャサリン・マクフィー (フォスターの現夫人) が歌うボーカルバージョンも制作されています。


Song Selection 2 : フォスタープロデュースで奇跡的なカムバック -Chicago-


ホーンセクションを交えた独自のロックサウンドで1970年代に活躍したChicago。

しかしながら、不慮の事故により他界したテリー・キャス (リーダー) の脱退以降、
バンドの音楽性が迷走気味になり、商業的にも低下の一途をたどることになります。

そんな危機的状況の中、総合プロデュースとバンドの未来を託されたDavid Foster。

彼はChicagoの音楽を根本から見直し、外部の作曲家やミュージシャンと手を組み、
大胆な改革を施しながら、再びChicagoを全米ヒットチャートの常連へと導きます。

最終的に、フォスターは3枚のオリジナルアルバムを手掛けることになるのですが、
それまでのChicagoには無かった都会的なサウンドで多くのリスナーを魅了します。

ちなみにですが、それぞれのアルバムを簡単に説明すると以下のようになります。

Chicago16・・・フォスタープロデュースが施された記念すべき最初のアルバム。
都会的なサウンドアプローチが功を奏して、バンドイメージに変革をもたらした。

Chicago17・・・最大のヒット作でもある本作は、紛れもないChicagoの最高傑作!
バンドの顔であったピーター・セテラ(ボーカル)在籍時の最後のアルバムでもある。

Chicago18・・・(3部作の中で)フォスターの個性が色濃く反映された作品であり、
フォスター特有の幻想的な世界観が新生Chicagoの幕開けを優しく包み込んでいる。

これらの3枚は、音楽プロデューサーとしてのフォスターを語る上で欠かせません。

次にご紹介する3曲は、各アルバムから個人的にベストと思える楽曲を選びました。
どれもフォスター作品を語る上で欠かすことのできない珠玉のマスターピースです。


6/30選 : Hard To Say I'm Sorry (Chicago16) - Chicago <1982>
「素直になれなくて」という邦題で日本のリスナーにも人気のある本楽曲。美しいピアノで奏でるイントロは、洋楽ロック史に残る名フレーズとして有名です。全体的にシンプルな構成 (アレンジ) となっているが、一つとしてムダな所がなく、要所要所で入るストリングスが極上のメロディーラインを引き立たせている。フォスターのキャリアを語る上でも重要な作品であることは間違いなく、多くのミュージシャンに影響を及ぼした歴史的名曲と言っても過言ではないでしょう。

7/30選 : You're The Inspiration (Chicago17) - Chicago <1984>
一曲の中でキーが目まぐるしく変わる複雑な楽曲構成となっていますが、リスナーにそのことを全くと言っていいほど感じさせない曲運びが本当に素晴らしい。加えて、ヴィンテージ風の優しいピアノやシンセベースなど、各楽器に対する音色選びも的確であり、その全てが本楽曲の温かみのある曲調にマッチしている。最高傑作として名高い「Chicago17」の中でも一・二を争う作品であり、Chicagoの音楽性とフォスターの感性がこれ以上ない形で融合した究極のラブソング。

8/30選 : Will You Still Love Me ? (Chicago18) - Chicago <1986>
ボーカル担当のジェイソン・シェフ(注①)を迎え、新体制で制作した「Chicago18」。本アルバムはフォスターの世界観を前面に押し出した作品となっており、どの楽曲もエッジの効いた音が特徴的。フォスターファンには必須のアルバムだが、その中でも、個人的にオススメしたい作品が「Will You Still Love Me ?」。ボーカルはもちろん、楽器に施されたエフェクターがThis is Fosterと言わんばかりの黄金比率!時折入るホーンセクションでChicagoらしさを演出しています。本楽曲にはシングル (ショート) バージョンも存在するが、本ジャーナルをお読みいただいた方には、アルバムに収録されたフルバージョンを聴いてもらいたい。


(注①:ジェイソン・シェフ)・・・「Chicago17」を最後にソロ活動に移行したピーター・セテラに変わって新加入したリードボーカル兼ベーシスト。
ピーター・セテラと遜色のない(瓜二つの)歌声であったこともあり、1981年に加入したビル・チャンプリンとともに、二度目のバンド黄金期を支えた。


Song Selection 3 : 天才的なプロデュース能力を知る -ベスト・オブ・カバー作品集-


過去の作品に新たな命を吹き込み、
オリジナルとは一味違う魅力を堪能できるカバー作品。

現在、世の中には数多くのカバー作品が存在しますが、
カバー作品に対する思いとして周知のことがあります。

それは、、、

「カバー作品がオリジナルを超えることはありえない」

という思いです。

これに関しては、私自身も全くもって同じ意見であり、異論はありません。
ですが、フォスターが手掛けたカバー作品を聴いた際、衝撃が走りました。

正直申し上げて、
「オリジナルを超えているかもしれない」と何度も感じてしまったのです。

オリジナル作品に対するリスペクトはもちろんのこと、
カバーするアーティストのオリジナルの如く創造された唯一無二の世界観。

オリジナルのアーティストがカバーする「セルフカバー」ともどこか違う、
音楽の「リノベーション」のような革新的なカバー作品が存在するのです。

次にご紹介する4曲は、
フォスターの天才的なプロデュース能力が反映された最上級のカバー作品。

ぜひ、オリジナルのものと比べてみてください!絶対にビックリしますよ!


9/30選 : I Will Always Love You - Whitney Houston <1992>
映画「ボディガード」の主題歌として大ヒットを記録した本楽曲は、世界で一番有名なラブソングと言っても過言ではなく、多くのリスナーに愛されています。ドリー・パートン(注②)が歌う原曲のゆったりとした曲調ではなく、ホイットニー・ヒューストンの力強いボーカルを生かした極上のバラードに仕上げている。一番のChorus (サビ) 前までアカペラで歌わせるという大胆な手法は、映画での配役 (歌手) を考慮して導いた最良の選択であり、世界中に驚きと感動を与えた。

10/30選 : Smile - Michael Jackson <1995>
原曲は、チャールズ・チャップリンの映画「モダン・タイムス」の劇中で流れたインストゥルメンタルのテーマ曲であり、チャップリン本人が作曲を手掛けた。フォスターバラードの真骨頂とも言える幻想的な空間の中で、美しく響き渡るマイケル・ジャクソンの優しい歌声。聴いているだけで自然と笑顔がこぼれます。これまで、沢山の音楽を聴いてきましたが、本楽曲以上に感動したカバー作品はありません。マイケル自身も、生涯で一番好きな作品と言っていたらしいです。

11/30選 : Crazy Little Thing Called Love - Michael Bublé <2003>
UKロックのスーパーレジェンド「Queen」。ボーカルを務めたフレディ・マーキュリーが、エルヴィス・プレスリーへのトリビュートとして書き下ろした楽曲をマイケル・ブーブレの艶やかな美声でスマートに歌い上げた至極のカバー作品。原曲でもあるQueen版よりもロカビリー(注③)の要素を前面に押し出しており、プレスリーに対するオマージュも忘れてはいない。各楽器のバランス(特に音の強さ)が素晴らしく、ポップスアレンジのお手本とも言える完成度になっている。

12/30選 : When You Wish Upon A Star - Jackie Evancho <2011>
ディズニー映画「ピノキオ」の主題歌としても有名な「星に願いを (邦題) 」。そんな永遠に語り継がれる名曲を、フォスターの魔法で包み込む至福のひととき。原曲が持つ空気感はそのままに、ストリングスを中心としたクラシカルなアレンジがとても美しく、聴いているだけで夢の中に飛び込んだような錯覚を覚える。また、11歳(歌唱時)という年齢を微塵も感じさせないジャッキー・エヴァンコ(注④)の凛とした歌声と儚げな世界観が魅力的なコントラストを生み出している。


(注②:ドリー・パートン)・・・アメリカの有名なシンガーソングライターであり、女優としても活躍。
カントリー・ミュージックの世界で最も称賛されている女性歌手であり、グラミー賞を8回受賞している。

(注③:ロカビリー)・・・1950年代に誕生した強烈なウッドベースが印象的な音楽ジャンルの一つ。
代表的なミュージシャンとしては、エルヴィス・プレスリーやカール・パーキンスなどが挙げられる。

(注④:ジャッキー・エヴァンコ)・・・弱冠10歳という若さでメジャーデビューを果たした天性の歌姫。
天使のような歌声が話題となり、アルバム「Dream with Me」のプロデュースをフォスターが担当した。


Song Selection 4 : 天賦の才能を持った歌姫 -Céline Dion-


ひとつの出会いがきっかけで、
その人の運命がガラリと変わることがあります。

Céline Dion (セリーヌ・ディオン) にとっての運命の出会い。
それは、間違いなくDavid Fosterとの出会いに他なりません。

(1980年代に)
母国カナダで天賦の才能を輝かせていたセリーヌ・ディオン。
そんな彼女に、世界デビューを勧めたのがフォスターでした。

フォスターが生み出す優雅な世界観に花を添える優美な歌声。
女性ボーカルものでは、間違いなく世界最高峰の完成度です。

それでは、、、

運命の出会いから生まれた珠玉の4作品をご紹介しましょう!


13/30選 : To Love You More - Céline Dion <1995>
日本のTVドラマ「恋人よ」の主題歌に採用され、洋楽としては異例のミリオンヒットを記録した本楽曲。作曲・アレンジともに、フォスターが手掛けています。美しいバイオリンと優美な歌声のマリアージュが印象的な本楽曲。バイオリンの演奏を担当したのは、「情熱大陸」などのヒット曲で知られる葉加瀬太郎さん。メロディーメイカーとしての才能が集約されたフォスターの大傑作。個人的には、バイオリンソロを堪能できる (アルバム収録の) フルバージョンがオススメ!

14/30選 : Because You Loved Me - Céline Dion <1996>
「セリーヌ・ディオン」と言うと、一般的には壮大なバラードを思い浮かべるかもしれませんが、ミディアム or アップテンポの楽曲も少なからず存在します。(歌い手としての) 彼女の魅力を語る際、並外れた声量が一番に挙げられますが、あらゆるジャンルを歌いこなす適応力と品位のある歌声も忘れてはいけません。シンプルな主旋律が印象的な本楽曲。彼女本来の歌声を堪能するオーラスまでと、オーラス部分の壮大なアレンジの強弱にフォスターのセンスが感じられます。

15/30選 : The Power Of The Dream - Céline Dion <1996>
1996年に開催されたアトランタオリンピックの開会式の為に制作された本楽曲。フォスターとベイビーフェイス(注⑤)による共同プロデュースも話題を集めた。ベイビーフェイスらしいリズムの乗せ方も素晴らしいが、そこに違和感なくシンクロする優雅なオーケストレーション(フォスターの世界観)もまた素晴らしい。最大のハイライトは、パワフルな歌声が鳴り響くオーラス部分。バックコーラスはもちろんのこと、同時に挿入されるホーンアレンジが本当に神がかってます!

16/30選 : All By Myself - Céline Dion <1997>
エリック・カルメン (アメリカのシンガーソングライター) が1975年に発表した不朽の名作バラードと、David Fosterの研ぎ澄まされた感性が融合した本楽曲。原曲へのオマージュもあって、アレンジそのものは非常にシンプルだが、フォスター特有の繊細な音作りが行き届いていて重厚なバラードのように感じられる。アカペラから始まるオーラス部分は本楽曲最大のハイライトであり、セリーヌ・ディオンの歌声でなければ成立しない唯一無二の永遠を堪能することができる。


(注⑤:ベイビーフェイス)・・・アメリカのシンガーソングライター及び音楽プロデューサー。
本名はKenneth Brian Edmondsだが、ベイビーフェイス (Babyface) の名前で知られている。
あのDavid Fosterに「彼の才能にずっと嫉妬していた」と言わしめるほどの名プロデューサー。


Mini Column:David FosterとWalter Afanasieff


30選の選考にあたり、セリーヌ・ディオン作品から4つ選びましたが、
これらのラインナップを見て違和感を覚えた方もいるかもしれません。

なぜならば、彼女を代表する楽曲であり、自身最大のヒット曲でもある
「My Heart Will Go On (1997) 」が選考から除外されているからです。

では、なぜ選ばなかったのか?

実は、選ばなかったのではなく、選べなかったのです。

「My Heart Will Go On」は、David Fosterのプロデュースではなく、
Walter Afanasieff(ウォルター・アファナシエフ)のプロデュースです。

Walter Afanasieffは、ロシア系アメリカ人の音楽プロデューサーであり、
これまで数多くの作品を手掛けてきたアメリカを代表するヒットメイカー。

彼が手掛けてきた作品は、日本のリスナーにも馴染み深いものが多く、
マライア・キャリーの「All I Want for Christmas Is You」や「Hero」、
ピーボ・ブライソン&レジーナ・ベルの「A Whole New World」は超有名。

彼の音楽は良い意味でクセがなく、万人から愛される世界観が特徴的です。

自身の強みを色濃く反映しながら、作品の芸術性を高めるDavid Fosterと、
作品独自の世界観を尊重しながら、ベストを探り当てるWalter Afanasieff。

時代を創造してきた二人の天才音楽プロデューサー。

今回は特別に、この二人の音楽性の違いがよく分かる楽曲をご紹介します。


・My Heart Will Go On (タイタニック) -Produced by Walter Afanasieff-
・Then You Look At Me (アンドリューNDR114) -Produced by David Foster-


上記の楽曲は、いずれも映画主題歌であり、セリーヌ・ディオンの歌唱曲。
また、作曲に関しても同じ人物 (ジェームズ・ホーナー) が手掛けています。

唯一の違いは、サウンドプロデュースを手掛けた人物が異なるということ。

王道とも言えるWalter Afanasieff作品とDavid Foster作品を比べることで、
「フォスターの独自性をより知ることができるのでは?」と思っております。

気になった方は、ぜひ聴き比べてみてください!

たった一人のミュージシャンが作品に及ぼす影響の大きさを知ると同時に、
音楽プロデューサー(及びアレンジャー)の偉大さを再認識できると思います。


Song Selection 5 : 重なり合う美しい歌声 -デュエット作品集-


次にご紹介するのは、
美しいハーモニーが耳と心を和ませるデュエット作品です。

最近は、(新譜の作品として) あまり聴かなくなりましたが、
その一番の理由として挙げられるのがアレンジの難しさです。

異なる音域を重ねることで独特の雰囲気を作り出せる反面、
それらを美しいハーモニーとして成立させるのは至難の業。

通常の楽曲制作よりも困難であることは間違いありません。

そこで素朴な疑問。

「デュエット作品をフォスターが手掛けるとどうなるのか?」

以下の4作品を聴けば、おのずとその答えが分かるはずです。


17/30選 : The Best Of Me - David Foster & Olivia Newton-John <1986>
フォスターのソロアルバム「The Best Of Me」に収録されたタイトル曲をオリビア・ニュートン=ジョン(注⑥)とのデュエットで再レコーディングした本楽曲。面白い逸話があり、2週間前に出産したばかりのオリビアの体調を考慮して、レコーディングは彼女の自宅に機材を持ち込んで行われた。そんな事情もあって、ボーカルエフェクトが強めに設定されているが、楽曲が持つ幻想的な世界観と二人の声質に素晴らしくマッチしており、結果的に良い方向に作用したと言える。

18/30選 : Unforgettable - Natalie Cole Feat. Nat King Cole <1991>
ナット・キング・コール(注⑦)がヒットさせたジャズ作品の音源と、その娘のナタリー・コールの歌声を多重録音によって重ね合わせた究極のデュエット作品。時代感はもちろん、違和感さえも感じない素晴らしいハーモニー (完成度) が大きな話題を呼び、翌年のグラミー賞において「最優秀楽曲賞」など7部門を獲得。亡き父へのオマージュとして奏でられる永遠の名曲は、史上最高のデュエット作品として沢山の音楽ファンから愛されており、気品に満ちた輝きを放っている。

19/30選 : Music Of My Heart - *NSYNC & Gloria Estefan <1999>
音楽を題材にした名作映画「ミュージック・オブ・ハート」の主題歌でもある本楽曲。映画の内容とリンクする感動的なハーモニーがリスナーの心を揺さぶる。作曲を手掛けたのは、世界的に有名な女性作曲家ダイアン・ウォーレン(注⑧)。彼女特有の叙情的な旋律と優雅なフォスターサウンドのバランスが素晴らしい。デュエット作品でありながら、一番は男性パートオンリーとなっており、男性のハーモニーと男女のハーモニーを一曲の中で楽しめる面白い構成になっている。

20/30選 : The Prayer - Josh Groban with Charlotte Church <2001>
フォスターのクラシカルな才能が濃密に凝縮された本楽曲。その完成度は、歴史的な名曲として大ヒットした「Time To Say Goodbye(注⑨)」を彷彿とさせる。美しくて優雅なクラシック・アレンジと優しいエレクトリック・ピアノの組み合わせが心地よく響き、類まれな才能を持った二人の美声を引き立たせています。ちなみにですが、アンドレア・ボチェッリとセリーヌ・ディオンのデュエット (こちらの方が有名) も存在し、より大人なムードを纏ったアレンジとなっている。


(注⑥:オリビア・ニュートン=ジョン)・・・オーストラリア出身のイギリス人歌手。2022年8月8日に永眠。
数多くの有名なヒット曲があり、代表曲としては「Have You Never Been Mellow」や「Physical」などがある。

(注⑦:ナット・キング・コール)・・・アメリカの偉大なジャズ・ピアニスト兼歌手。1965年2月15日に永眠。
ピアニストとしての名声はもちろん、艶と温かみのある歌声が絶賛され、歌手としても数多くのヒット曲がある。

(注⑧:ダイアン・ウォーレン)・・・2001年にソングライターの殿堂入りを果たしたアメリカの女性作曲家。
アーティストへの楽曲提供の数は1000曲以上と言われ、ポップスからロックまで幅広いジャンルをこなす天才。
代表曲は「Un-Break My Heart(トニー・ブラクストン)」や「I Don't Want to Miss a Thing(エアロスミス)」。

(注⑨:Time To Say Goodbye)・・・イタリアの有名なテノール歌手アンドレア・ボチェッリの代表的な楽曲。
サラ・ブライトマン (イギリスのソプラノ歌手) とのデュエット版は、世界中で大ヒットを記録し話題となった。


Song Selection 6 : フォスターバラードの真骨頂 -女性ボーカル・セレクション-


「優美な音色で奏でられる美しい旋律」

フォスターの魅力 (世界観) が最大限に発揮される、
ミディアム~スローテンポの楽曲はやはり格別です。

ゆっくりとした時間の中で奏でられる永遠への調べ。

ラストの10選は、女性・男性ボーカル作品の中から、
フォスタービギナーのために厳選した楽曲をご紹介。

それぞれ良さが違うので、聴き比べてみてください!


21/30選 : Through The Fire - Chaka Khan <1984>
まず注目して欲しいのが、たったの2和音だけで構成されたイントロ部分。これほどシンプルで分かりやすく、かつ美しいイントロを聴いたことがありません。本楽曲は元々「Chaka」というタイトルのインストゥルメンタル作品であり、「チャカ・カーンに歌って欲しい!」というフォスターの願望から生まれました。ある意味、フォスターからチャカ・カーンに宛てた究極のラブレターとも言える本楽曲。フォスターの才能は、音楽のセンスだけにとどまらないようです 笑。

22/30選 : 抱いて・・・ - 松田聖子 <1988>
松本隆 (日本を代表する作詞家) とDavid Fosterという夢の組み合わせによって製作された本楽曲。シングル曲ではありませんが、ファン人気の高い作品です。一聴しただけでフォスターだと分かる独特な音の世界観と絶妙にマッチする大人びた歌詞のバランス。音楽作品としては非常に難しい部類に入ると思いますが、それを見事に歌い上げた聖子さんの非凡な歌唱力が印象に残ります。女性アイドルではなく、歌手としての「松田聖子」を覚醒させた隠れた名曲だと思います。

23/30選 : Grown-Up Christmas List - Natalie Cole <1990>
フォスター作曲によるクリスマスソングとしてこれまで沢山のアーティストにカバーされてきた本楽曲。どれも素晴らしいですのが、個人的にオススメなのが「The Christmas Album(David Foster)」に収録されているナタリー・コール版。彼女の美声もさることながら、フォスター感満載のサウンドアレンジが最高!少々強すぎるくらいのリバーブが逆に心地よく、クリスマス特有の幻想的な世界観を際立たせています。主旋律に添えられる希望に満ち溢れた歌詞も素敵です。

24/30選 : Run To You - Whitney Houston <1992>
本楽曲を初めて聴いた際、とても驚いたことがありました。それは、ホイットニー・ヒューストンの歌声とエレクトリック・ピアノの音色との相性の良さです。「その楽曲にとってのベストな選択」を常に模索し続けるフォスターのセンスが光るアレンジになっており、楽曲全体を纏う優しい雰囲気ともマッチしている。楽曲の良し悪しは「アレンジ」によって左右されることを教えてくれる素晴らしい教材であり、「I Will Always Love You」にも劣らない作品だと思います。

25/30選 : Un-Break My Heart - Toni Braxton <1996>
深みのあるアルト (低音) ボイスが魅力的なトニー・ブラクストンの大ヒット曲。アメリカのBillboard Hot 100で11週連続1位という驚異的な記録を樹立した。R&Bバラードの傑作と言っても過言ではない本楽曲。アコースティックギター主体のサウンドアレンジが切なさを纏わせており、リズム隊の音色も素晴らしい。本楽曲最大の注目ポイントは、2分55秒辺りから挿入されるシンセベースの音色。生音主体で構築されたリアルな空気感を良い意味でぶち壊す数小節の違和感。その後に続くオーラスの盛り上がりと本楽曲に漂うミステリアス感を強調しています。悲壮感を演出するスネアドラムの響きにも注目して聴いてみてください!


Song Selection 7 : 世界中のリスナーを虜にする大人の音楽 -男性ボーカル・セレクション-


これはあくまでも個人的な感想になりますが、
フォスターが手掛ける男性ボーカル作品には、他には無い独特な「色気」があります。

もちろん、歌唱する人が元々持ち合わせている色気ということもあるとは思いますが、
サウンドからというよりも、作品そのものから色気が溢れ出ている感じがするのです。

女性ボーカル作品からは俯瞰的に捉えながらプロデュースしている印象を受けますが、
男性ボーカル作品からは彼のパーソナルな部分が反映されているように感じられます。

はたして、皆さまの耳にはどのように響いてくるのか?ぜひ、確かめてみてください!


26/30選 : After the Love Has Gone - Earth, Wind & Fire <1979>
フォスターが音楽プロデューサーとして覚醒する前にジェイ・グレイドン (音楽業界にその名を知らしめる名ギタリスト) と組んでいた伝説のユニットAirplay。そのAirplayが発表した唯一のアルバム「ロマンティック」のラストを飾る楽曲であり、AOR(注⑩)を代表する名曲として多くのリスナーに愛されている本楽曲。フォスター作品の中でもカバーされることが多い作品として有名ですが、個人的に一番オススメしたいのがこのアース・ウィンド・アンド・ファイアー版です。美しいピアノの音色を引き立たせる優しいハーモニーはもちろんのこと、アースの十八番でもあるホーンセクションがこれ以上ない大人の色気を演出している。

27/30選 : I Swear - All-4-One <1994>
「この曲は絶対に売れる!」ヒットに固執しないフォスターの口から珍しく発せられたこの言葉。その後、当然のように11週連続1位の大ヒットを記録します。元々は、ジョン・マイケル・モンゴメリー (カントリー歌手) の作品ですが、All-4-Oneとの相性を見抜いていたフォスターが極上のアレンジでリノベーション。原曲に漂うノスタルジックな世界観をフォスターサウンドで見事に昇華させた永遠のラブソングは、現在でも結婚式の定番曲として多くの人に愛されています。

28/30選 : Why Goodbye - Peabo Bryson <1994>
個人的な話になってしまいますが、初めてピーボ・ブライソン(注⑪)の歌声に触れたとき、「この声はDavid Fosterの世界観と絶対に合う!」と直感しました。男性の方でも思わずうっとりしてしまうほどの美声とフォスターが紡ぐ美しい音の世界が融合し、そして創造される一つの奇跡。ある意味、言葉がありません。
楽器選びはもちろんのこと、楽曲構成においても文句のつけようがなく、フォスターの美学が細部に至るまで行き届いています。本当に美しい名バラードです。

29/30選 : You're Still You - Josh Groban <2001>
「言葉では表現できないほどの衝撃!」本楽曲を初めて聴いたとき、そのあまりの美しさに我を忘れて感動し、思わず涙したことを今でも鮮明に覚えています。エンニオ・モリコーネ(注⑫)が紡いだ優美な旋律を流麗なストリングスが包み込んで、ジョシュ・グローバンの神秘的な歌声と奇跡的にマリアージュしている。私の生涯のベストソングと言っても過言ではない本楽曲。出会ってから四半世紀が過ぎようとしている今でも、永遠を思わせるような眩い輝きを放っています。

30/30選 : Because We Believe - Andrea Bocelli <2007>
世界最高峰のテノール歌手として知られるアンドレア・ボチェッリ。盲目というハンディキャップを抱えながらも、神様から与えられたような心揺さぶる歌声で世界中のリスナーを魅了してます。トリノオリンピック(2006)の閉会式でも披露された本楽曲。威風堂々たる演奏にも全く引けを取らない歌唱力は圧巻の一言。フォスター作品特有の上品な美しさに加え、荘厳な雰囲気が漂う楽曲の世界観に花を添える歌詞もまた素晴らしく、後世に語り継がれるべき名曲だと思います。


(注⑩:AOR)・・・Adult-Oriented Rock (アダルト・オリエンテッド・ロック) の略語であり、大人向けのロックという意味がある。
日本においてはAORを愛するリスナーが非常に多く、Bobby CaldwellsやBoz Scaggs、バンドではChicagoやTOTOなどが有名である。

(注⑪:ピーボ・ブライソン)・・・アメリカのソウル・R&B歌手。驚くほどの美声の持ち主であり、女性歌手とのデュエット曲が多い。
ディズニー映画の主題歌にもなった「A Whole New World(アラジン)」や「Beauty and the Beast(美女と野獣)」は、あまりにも有名。

(注⑫:エンニオ・モリコーネ)・・・イタリア (ローマ) 出身の作曲家。映画音楽の巨匠として世界的に有名。2020年7月6日に永眠。
彼の名を世の中に知らしめた映画「ニュー・シネマ・パラダイス」の音楽は、映画音楽史に残る傑作として多くの人々に愛されている。


Epilogue


David Fosterの音楽は、
何故こんなにも人々の心を掴むのだろうか?

この疑問に対する答えを自分なりに模索し、
導き出した一つの答えが本ジャーナルです。

一人でも多くの方にフォスター作品の魅力、
さらに言えば、音楽そのものの素晴らしさが伝われば幸いです。

今回、残念ながらご紹介できなかった作品も沢山ありますので、ぜひ検索してみてください!


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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