May 10, 2021
FOCUS「残酷な天使のテーゼ」
EarCOUTURE JOURNAL No.10にて、
「ボーカル楽曲を100倍楽しむメソッド」を発表させていただきました。
多くの人に実践していただき、音楽の奥深さと、素晴らしさを改めて感じていただければと思います。
あるテーマを元にして構築された音 (伴奏) の中に、
歌声という新たな音色を吹き込んで、完成するのがボーカル楽曲です。
ボーカル楽曲の表現方法は、
ファッションショーと似ている要素があるのかもしれませんね。
洋服も、人間が着ることで動きが加わり、表情が豊かになります。
アカペラにも "静寂" という伴奏がきちんとあるように、伴奏と歌声のどちらか一方が欠けてしまっては「ボーカル楽曲」として、未完成と言えるでしょう。
「EarCOUTURE JOURNAL "FOCUS"」では、有名曲や話題曲の音作り (構成) にスポットを当てながら、ボーカル楽曲の魅力をできるだけ専門用語を使わずに、分かり易く解説していきます。皆さまも「ボーカル楽曲を100倍楽しむメソッド」を参考にしながら、楽しんでいただければ幸いです。
最初に"FOCUS"する楽曲は、
アニメ業界に革命を起こした「新世紀エヴァンゲリオン」のアニメ版主題歌でもある、高橋洋子さんの「残酷な天使のテーゼ」です。
まず初めに、この楽曲の構成から見ていきましょう。
「イントロ (サビ始まり)」「一番 (Aメロ+Bメロ+サビ)」「間奏」「二番 (Aメロ+Bメロ+サビ)」「ラスサビ (Bメロ+サビ) 」
構成そのものを活字で見る限りでは、
邦楽 (J-POP) の最もスタンダードな形 (イントロ+一番+二番+ラスサビ) と比較してみても、代わり映えする構成ではないのですが、バックの音 (アレンジ) に注目するとやはり!? 普通ではなかったことが判明します。(エヴァンゲリオンの主題歌なので、普通の構成の方が逆に違和感を感じたかもしれません。)
(ボーカル楽曲に限ったことではありませんが) 楽曲の基本構成としてまず言えることは、ラストに向けて徐々に盛り上げていくというのが一般的なやり方です。
その基本構成と比べた時に、真っ先に違和感を感じる箇所が「一番と二番のアレンジ」です。「一番のアレンジをそのままコピーして二番を構築したのか!?」と思うほどに、ほぼ同じアレンジとなっています。皆さまの中には「ただ歌詞を変えているだけじゃないの!?」と思われる方もいるかもしれませんが、徐々に盛り上げていくという観点から見ても、一番より二番の方が音数が多くなって厚みを感じさせる構成が一般的です。
加えて、一番のサビ終わりから二番始まりまでの間奏 (最後にイントロ部分をもう一度入れるという構成) が異様に長い点も気になりました。
(アップテンポ楽曲の際は特に) 一番終わりから二番始まりまでの間奏は、なるべく短くするのがセオリーです。陸上のリレーで例えるならば、バトンパスの場面ですからね!スムーズにつないで、二番へと気持ちよく入りたい場面なのに、なぜ無駄とも思える長い間奏をわざわざ入れたのか!?
ここまでをまとめると、
全体の構成については、以下の2点に疑問が残る (普通じゃない!?) ということになります。
①・・・なぜ一番と二番のアレンジがほぼ同じなのか!?
②・・・一番終わりの間奏の長さ (そもそもなぜこの部分に間奏を入れたのか!?)
摩訶不思議な楽曲構成も、ある一つの仮説を立てると色々と見えてきます。
それは「間奏」~「ラスサビ」の部分は、CD化する際に後から追加されたのでは!? というものです!
元々は、アニメ版のオープニングテーマとして、
「イントロ」「ワンコーラス (Aメロ+Bメロ+サビ)」のみの構成であった。
そこから、CD化するにあたり (元々のままでは短すぎるので) 、
「イントロ」「一番」【「間奏」「二番」「ラスサビ (Bメロ+サビ) 」】
という構成に変更した?! ←【】の部分を後から追加した
こう推測すると、一番と二番のアレンジが変わり映えしないことにも納得がいきます。
つまりは、
二番は一番の続きではなく、元々の構成を繰り返すという方法を選択した。(二番は一番のリピートなのだからアレンジもほぼ同じである)
加えて、
(二番が一番のリピートであることを印象付けるために) 間奏の最後にイントロ部分を入れたから、間奏部分が必要以上に長くなってしまった。
もちろんこれらは、楽曲の構成から推測した個人的な見解であり、事実とは異なるのかもしれません。
その一方で、
(この仮説が正しければ) 我々の知っている「残酷な天使のテーゼ」は、
実は「シン・残酷な天使のテーゼ :||」とも言える作品であった!とも思えるので、ある意味テンションが上がらないでしょうか!?
(音楽に限らず) 芸術作品というものは、ある一定の解釈を求めるだけではなく、時に個々の創造性と融合して完成する側面があると思います。
完成された楽曲の構成を紐解くことで、見えなかった部分が見えるようになり、アーティストが意図していなかった世界観をも創造することができるのです。
オーディオ製品を、"新しい世界を創造するためのアイテム" という視点で選んでみるというのも、面白いのかもしれませんね。
ちなみにですが、
「残酷な天使のテーゼ」は低音特化型の製品との相性が抜群です!(オーディオのタイプについてはコチラの記事をご一読ください)
(リズム隊とギターで) 生楽器を織り交ぜた「残酷な天使のテーゼ」は、打ち込み系だけでは表現しにくい、人間味にあふれた生々しいサウンドになっています。
「新世紀エヴァンゲリオン」のような、近未来や異世界を思わせる世界観のアニメ主題歌の場合、伴奏はコンピューター音で構成する打ち込み系の方が違和感が無く、むしろその方が良いとされることが多いのですが、感情の起伏が激しいストーリーとのマッチングを考えれば、生楽器を入れるという選択はベストであると言えるでしょう!
「残酷な天使のテーゼ」に関しては、とにかくベースです。「ベース以外は聴かなくてもいい!」とまでは言いませんが、ベースを常に意識する事で聴いている時の楽しさが倍増します。ビート自体は基本に忠実なのですが、落ち着かせるところと盛り上げていくところの緩急が素晴らしく、聴いていて心地よいのです。
特に素晴らしいのは、サビ終わりの「神話になれ」の部分です。
この部分で節が途切れる一番とラスサビに関しては、主旋律 (ボーカルのメロディー) と同じ譜割で弾いているのですが、二番の「神話になれ」の部分に関してはラスサビパートにすぐ入るため、主旋律と同じ譜割で弾くとビートが途切れて、違和感が残ってしまいます。なので、二番の「神話になれ」に限り、8ビートで途切れることなくベース音が入ります。この時の、コンピューター音では出せない疾走感が非常に素晴らしいです。
最後に、
「残酷な天使のテーゼ」って、(一回聴くと) なぜか続けてもう一度聴きたくなりませんか?
楽曲としての完成度が素晴らしいことも理由の一つですが、実は曲終わりにある魔法をかけられていたのです!
ラスサビ「この宇宙を抱いて輝く 少年を神話になれ」のバックに耳を澄ませてください。3回あるサビの中で、唯一イントロ部分のシンセ音が被せてあります!イントロというのは「これから物語が始まるよ!」の合図でもあります。そのイントロ部分を、楽曲の最後に持ってくる。つまりは、"終わりの始まり" ならぬ "終わりが (新たな) 始まり" へと導く仕掛けが施されており、脳内にリピート再生を仕向けるようになっていたのです。
上記で述べた以外にも、
歌声以外を意識しながら聴いていくと色々な発見があると思います。
「音楽」とは、音を楽しむということです。
皆さまも、一つ一つ意味を持って構築されている音の調和が、意識的に感じられる面白さをぜひ体感してみてください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「ボーカル楽曲を100倍楽しむメソッド」を発表させていただきました。
多くの人に実践していただき、音楽の奥深さと、素晴らしさを改めて感じていただければと思います。
あるテーマを元にして構築された音 (伴奏) の中に、
歌声という新たな音色を吹き込んで、完成するのがボーカル楽曲です。
ボーカル楽曲の表現方法は、
ファッションショーと似ている要素があるのかもしれませんね。
洋服も、人間が着ることで動きが加わり、表情が豊かになります。
アカペラにも "静寂" という伴奏がきちんとあるように、伴奏と歌声のどちらか一方が欠けてしまっては「ボーカル楽曲」として、未完成と言えるでしょう。
「EarCOUTURE JOURNAL "FOCUS"」では、有名曲や話題曲の音作り (構成) にスポットを当てながら、ボーカル楽曲の魅力をできるだけ専門用語を使わずに、分かり易く解説していきます。皆さまも「ボーカル楽曲を100倍楽しむメソッド」を参考にしながら、楽しんでいただければ幸いです。
最初に"FOCUS"する楽曲は、
アニメ業界に革命を起こした「新世紀エヴァンゲリオン」のアニメ版主題歌でもある、高橋洋子さんの「残酷な天使のテーゼ」です。
まず初めに、この楽曲の構成から見ていきましょう。
「イントロ (サビ始まり)」「一番 (Aメロ+Bメロ+サビ)」「間奏」「二番 (Aメロ+Bメロ+サビ)」「ラスサビ (Bメロ+サビ) 」
構成そのものを活字で見る限りでは、
邦楽 (J-POP) の最もスタンダードな形 (イントロ+一番+二番+ラスサビ) と比較してみても、代わり映えする構成ではないのですが、バックの音 (アレンジ) に注目するとやはり!? 普通ではなかったことが判明します。(エヴァンゲリオンの主題歌なので、普通の構成の方が逆に違和感を感じたかもしれません。)
(ボーカル楽曲に限ったことではありませんが) 楽曲の基本構成としてまず言えることは、ラストに向けて徐々に盛り上げていくというのが一般的なやり方です。
その基本構成と比べた時に、真っ先に違和感を感じる箇所が「一番と二番のアレンジ」です。「一番のアレンジをそのままコピーして二番を構築したのか!?」と思うほどに、ほぼ同じアレンジとなっています。皆さまの中には「ただ歌詞を変えているだけじゃないの!?」と思われる方もいるかもしれませんが、徐々に盛り上げていくという観点から見ても、一番より二番の方が音数が多くなって厚みを感じさせる構成が一般的です。
加えて、一番のサビ終わりから二番始まりまでの間奏 (最後にイントロ部分をもう一度入れるという構成) が異様に長い点も気になりました。
(アップテンポ楽曲の際は特に) 一番終わりから二番始まりまでの間奏は、なるべく短くするのがセオリーです。陸上のリレーで例えるならば、バトンパスの場面ですからね!スムーズにつないで、二番へと気持ちよく入りたい場面なのに、なぜ無駄とも思える長い間奏をわざわざ入れたのか!?
ここまでをまとめると、
全体の構成については、以下の2点に疑問が残る (普通じゃない!?) ということになります。
①・・・なぜ一番と二番のアレンジがほぼ同じなのか!?
②・・・一番終わりの間奏の長さ (そもそもなぜこの部分に間奏を入れたのか!?)
摩訶不思議な楽曲構成も、ある一つの仮説を立てると色々と見えてきます。
それは「間奏」~「ラスサビ」の部分は、CD化する際に後から追加されたのでは!? というものです!
元々は、アニメ版のオープニングテーマとして、
「イントロ」「ワンコーラス (Aメロ+Bメロ+サビ)」のみの構成であった。
そこから、CD化するにあたり (元々のままでは短すぎるので) 、
「イントロ」「一番」【「間奏」「二番」「ラスサビ (Bメロ+サビ) 」】
という構成に変更した?! ←【】の部分を後から追加した
こう推測すると、一番と二番のアレンジが変わり映えしないことにも納得がいきます。
つまりは、
二番は一番の続きではなく、元々の構成を繰り返すという方法を選択した。(二番は一番のリピートなのだからアレンジもほぼ同じである)
加えて、
(二番が一番のリピートであることを印象付けるために) 間奏の最後にイントロ部分を入れたから、間奏部分が必要以上に長くなってしまった。
もちろんこれらは、楽曲の構成から推測した個人的な見解であり、事実とは異なるのかもしれません。
その一方で、
(この仮説が正しければ) 我々の知っている「残酷な天使のテーゼ」は、
実は「シン・残酷な天使のテーゼ :||」とも言える作品であった!とも思えるので、ある意味テンションが上がらないでしょうか!?
(音楽に限らず) 芸術作品というものは、ある一定の解釈を求めるだけではなく、時に個々の創造性と融合して完成する側面があると思います。
完成された楽曲の構成を紐解くことで、見えなかった部分が見えるようになり、アーティストが意図していなかった世界観をも創造することができるのです。
オーディオ製品を、"新しい世界を創造するためのアイテム" という視点で選んでみるというのも、面白いのかもしれませんね。
ちなみにですが、
「残酷な天使のテーゼ」は低音特化型の製品との相性が抜群です!(オーディオのタイプについてはコチラの記事をご一読ください)
(リズム隊とギターで) 生楽器を織り交ぜた「残酷な天使のテーゼ」は、打ち込み系だけでは表現しにくい、人間味にあふれた生々しいサウンドになっています。
「新世紀エヴァンゲリオン」のような、近未来や異世界を思わせる世界観のアニメ主題歌の場合、伴奏はコンピューター音で構成する打ち込み系の方が違和感が無く、むしろその方が良いとされることが多いのですが、感情の起伏が激しいストーリーとのマッチングを考えれば、生楽器を入れるという選択はベストであると言えるでしょう!
「残酷な天使のテーゼ」に関しては、とにかくベースです。「ベース以外は聴かなくてもいい!」とまでは言いませんが、ベースを常に意識する事で聴いている時の楽しさが倍増します。ビート自体は基本に忠実なのですが、落ち着かせるところと盛り上げていくところの緩急が素晴らしく、聴いていて心地よいのです。
特に素晴らしいのは、サビ終わりの「神話になれ」の部分です。
この部分で節が途切れる一番とラスサビに関しては、主旋律 (ボーカルのメロディー) と同じ譜割で弾いているのですが、二番の「神話になれ」の部分に関してはラスサビパートにすぐ入るため、主旋律と同じ譜割で弾くとビートが途切れて、違和感が残ってしまいます。なので、二番の「神話になれ」に限り、8ビートで途切れることなくベース音が入ります。この時の、コンピューター音では出せない疾走感が非常に素晴らしいです。
最後に、
「残酷な天使のテーゼ」って、(一回聴くと) なぜか続けてもう一度聴きたくなりませんか?
楽曲としての完成度が素晴らしいことも理由の一つですが、実は曲終わりにある魔法をかけられていたのです!
ラスサビ「この宇宙を抱いて輝く 少年を神話になれ」のバックに耳を澄ませてください。3回あるサビの中で、唯一イントロ部分のシンセ音が被せてあります!イントロというのは「これから物語が始まるよ!」の合図でもあります。そのイントロ部分を、楽曲の最後に持ってくる。つまりは、"終わりの始まり" ならぬ "終わりが (新たな) 始まり" へと導く仕掛けが施されており、脳内にリピート再生を仕向けるようになっていたのです。
上記で述べた以外にも、
歌声以外を意識しながら聴いていくと色々な発見があると思います。
「音楽」とは、音を楽しむということです。
皆さまも、一つ一つ意味を持って構築されている音の調和が、意識的に感じられる面白さをぜひ体感してみてください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。