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FOCUS「残響散歌」

光と影が調和する絶妙なコントラスト。
日本の音楽がBillboard (ビルボードチャート) を席巻する日もそう遠くはないかもしれない!?

今回"FOCUS"する楽曲は、
煌びやかな世界観の中で響き渡る力強いボーカルが魅力的な、Aimerさんの「残響散歌」です。

3分という短い時間で表現された圧倒的な世界観。
心の奥にズドンと響いた「残響散歌」の音作りを、3つのポイントに絞って解説していきます!


POINT 1:一瞬で楽曲の世界観に引き込む完璧なイントロ


最初に聴こえてくるのは、
Jazzy (ジャジー) な雰囲気を身に纏ったピアノの音色。

お洒落なプロローグで第一印象から引き込まれていきます。

全体的にピアノとホーンセクション主体で構成されているので、
ロックでありながらエレキギターの存在感をあまり感じません。

さらに言えば、ロック特有の荒々しさも緩和されています。

「残響散歌」は、言わずと知れた大ヒットアニメ映画、
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の続編にあたる「アニメ『鬼滅の刃』遊郭編」のオープニングテーマ。

華やかなイメージの強い "遊郭" を表現するのにホーンセクションは必要不可欠ですが、
ホーンセクションだけでは遊郭特有の "妖艶さ" という部分において少々物足りません。

そこで重要になってくるのが、ピアノの音色です。

ピアノの音を効果的に使いながら、変則的なリズムでJAZZの雰囲気を匂わせ、
「ロック × ジャズ」というミスマッチな楽曲構成で妖艶さを演出しています。

さらに、品のあるピアノの音色をホーンよりも先に聴かせることで、
ホーンの音色にもお洒落な雰囲気を纏わせています。(ここ結構重要です)

「残響散歌」のイントロは二部構成になっており、
Aimerさんのスキャットとともに盛り上がる後半部分はアウトロにも採用されています。

これは個人的な意見になりますが、
イントロ最大の聴きどころはこの後半部分ではなく別のところにあります。

一番最初 (ピアノが入る前) と後半に入る直前 (スキャットが入る前) に2発ずつ入るスネアドラム。
注意して聴かなければ気にも留めないこの2発のスネアドラムが、イントロ最大の聴きどころです。

何の変哲もない、たった2発のスネアドラム。

リズム的には全く同じですが、
一番最初と後半に入る直前でその役割は変わってきます。

最初の2発は、直後に入るピアノの音が変則的なリズムで入るので、
そのリズムに引っ張られないための予防効果としてのスネアドラム。

後半の2発は、スキャット (歌声) を入れるタイミングを分かり易くするためのスネアドラム。
言うなれば、運動会の徒競走で言うところの「よーいドン!」の役割と全く同じになります。

(後半の2発は) プロのミュージシャンであれば、ある意味必要のないリズムのように思えますが、
境界線があることでスキャットの部分が際立ち、より聴きやすくなるというメリットもあります。

音楽は「リズムが全て!」と言っても過言ではありません。
たった2発のスネアドラムがもたらす効果は想像以上に大きいのです。(少々マニアックですが、気にして聴いていただけると嬉しいです。)


POINT 2:邦楽のベーシックを壊し疾走感を重視した楽曲構成


「残響散歌」を語る上で外せないワード。それは "疾走感" です。

アップテンポな楽曲なので当然と言えば当然ですが、巧みなテクニックで疾走感を際立たせています。

それが最も顕著に表れている箇所が、
二番のBメロ終わりからラスサビへとつながる間奏部分。

(一般的には)
「Aメロ + Bメロ + サビ」という基本構成を2回繰り返してからラスサビへとつなぐ構成が邦楽のベーシックとされていますが、
「残響散歌」は二番のサビを飛ばし (あえて歌わず) 、間奏を挿んでからラスサビ (結果的には2回目のサビ) へと繋いでいます。

こうすることで、単に楽曲の再生時間を短くするだけでなく、サビをより聴きたくなる衝動にリスナーを誘導できます。
(一番で「Aメロ + Bメロ + サビ」という流れを示しているので、二番もその流れでくると勝手に思い込んでいるため。)

(それまで抑えていた) エレキギターを前面に押し出した間奏からのラスサビ。

お膳立てが整い、ある意味焦らされた状態で迎えるサビの効果は絶大であり、楽曲そのものの印象もより強くなります。

また、イントロの後半部分を一番終わりの間奏とアウトロにも採用することで、(続けて) Aメロを聴きたくなるように仕向けています。

このリピート再生を促す巧妙なアレンジがあまりにも自然すぎて、ほとんどの人は気づかないことでしょう。

(一曲の中で) 重厚に作り込みながら印象を残させる従来の構成ではなく、リピートを促して印象を残させる (疾走感とともに曲の回転率も上がる) この構成は、まさにサブスクリプション全盛の今の時代に合った構成とも言えるでしょう!

そして、この楽曲構成をより引き立たせているのが、主役であるAimerさんのボーカルパフォーマンスです。


POINT 3:唯一無二のボーカルが加わることで生まれる独特なGROOVE (グルーヴ)


Aimerさんは、"歌声も楽曲を構成する音色の一部"として伴奏に合わせるように歌うので、
ひとつひとつの言葉(音)にネイティブな英語のような、独特なリズム感を漂わせています。

日本の音楽に関しては歌謡曲からの流れもあって言葉(歌詞)に重点を置きながら歌う傾向があり、
ひとつひとつの言葉をハッキリと発音して、言葉の意味を問いかけるように歌うのが一般的です。

煌びやかな伴奏と唯一無二のボーカルが、光と影のように調和する絶妙なコントラスト。

イギリス人歌手のAdele(アデル)を思わせる独特なハスキーボイスで奏でられる英語のような日本語のグルーヴ感が心地よく響き、
日本の楽曲でありながら今までの邦楽には無い何かを感じ、新しい (目指すべき) 日本の音楽に触れたような感覚を味わえました。

私自身、初めてこの楽曲を聴いたとき、
歌詞が全て日本語であるにもかかわらず洋楽を聴いているかのような印象を受けました。


「伝統」と「革新」


この二つの言葉は一見すると相反する言葉のように思えますが、実は密接な関係で結ばれています。

「伝統」を後世に伝えていくためには、時に「革新」が必要となり、
「革新」を生み出すためには、「伝統」を理解する必要があります。

一つのことを守り続けることはとても素晴らしいことですが、それだけでは新しい時代は切り開けません。

日本語がもつ言葉としての美しさ(伝統)と、日本語にしかない独特なグルーヴ感(革新)が調和する「残響散歌」。

2022年は始まったばかりですが、
「早くも今年を代表する曲に出会えた」と思えるほど素晴らしい楽曲だと思います。

楽曲の世界観を見事に映像化させたプロモーションビデオも素敵なので、ぜひご覧になってみてください!


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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